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月を染めゆく緋色のベルベット  作者: 藍スミレ
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だがそもそも

 しかし、簡易的な罠を仕掛けようにも、その罠を作る素材そのものが、この乾いた大地に存在しない。

 川底にも、罠に使えそうな物はない。


 歩くしかない。

 ロウはただひたすら歩きながら、運良く善良な人と出会って、運良く清潔な食料を恵んで貰って、運良く清潔な部屋に泊めてもらおうなどという、あまりにも甘すぎる考えを抱いていた。


「誰でもいい……助けて」


 灼熱の太陽は、いまだ真上で燦々と輝いている。

 あれから、三時間はたっただろうか。


「何も……ない」


 足を棒にして歩けども、見える景色に変化はない。


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