買い出し
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「えーと、数日分の食料と皮剥用ナイフ、鎖帷子、短剣、傷薬、薬草、砥石、それから……」
僕らはライグスへ向かう道中で狩っていた、猛獣の毛皮と内臓、牙、爪などを売って得た資金で買い物をしている。
聞くところによると、僕らが狩った猛獣は元々ライグスの周辺に巣を作っていた害獣だったらしく、町を出入りする者が襲れる被害が後を絶たなかったらしい。
その感謝の意も込められて、思いの外高値で売れたのだ。
「これからは、お前も戦いに加わってもらう。 自分の身くらい自分で守れるようにならないと話にならねぇからな」
強めなヴァルドレッドさんの物言いに、僕は反論する事ができない。
言っている事はとても正しいからだ。
いつも隣に、ヴァルドレッドさんがいるとは限らないのだから。
「……頑張ります」
ヴァルドレッドさんの性格から考えて、過酷極まりない特訓をさせられるんだろうなぁ。
果たして、いつまで生き延びられるだろうか。
そんな事を考えながら、僕とヴァルドレッドさんは大通りを歩いていた。
すると
「……嘘だろ、なんでアイツが。 やべぇ!!」
言って、僕は物凄い力で手を引っ張られた。
♠︎
彼が歩いていたのは偶然に過ぎない。
偶然、帰り道に立ち寄ったのがこのライグスだっただけなのだ。
「相変わらず賑やかな事だ」
陽炎の騎士レイス。
ヴァルドレッドのかつての同胞である。
鏡のように磨かれた鎧。
腰には豪奢な装飾が施された美しい剣。
額を露わに、後ろへビッチリと撫で付けた髪型。
皺が寄っている眉間と、刃のように鋭い目つき。
ヴァルドレッドは用心深く、その姿を観察して大きく溜め息をついた。
「マジかよ……まさかここに来るなんて…」




