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月を染めゆく緋色のベルベット  作者: 藍スミレ
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混乱

 彼女には野望がある。

 例え命にかえてでも、何を犠牲にしてでも、必ず成し遂げなければならない、言わば生きる目的だ。


「どうしよう」


 ロウには何もない。

 元奴隷だったが故に、何も手に入らなかった。


 ただ働かされる為だけに生かされて、ただそれだけの為に生き、そしてやがて虚しく力尽きる。

 そのような人生を辿る筈だったのだ。


 だったというのに、ロウは生きる選択をした。

 生き抜いていくだけの金も、苦痛を分かち合う友も、身寄りさえも。何も無いというのに。


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