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消失
「気色悪いなぁ、いい加減出てきやがれ!!」
二度目の咆哮も、虚空へ消えていく。
だが、粘つくような視線は不意に消失した。
ヴァルドレッドの威勢に、気圧されたのだろうか。
「……逃げやがったか。 だが油断はできねえな」
剣の柄から手を離すヴァルドレッド。
だが、それでも一息に剣を抜いて、即座に敵に襲いかかれるように、鉄壁の体勢だけは崩さない。
例え、真後ろの遠くから放たれた弓矢でも、すぐさま避けるなり対応して、敵の居場所を視認できる。
数多の戦場を駆け抜け、勝ち残ってきた歴戦の騎士なればこそなせる技であった。




