ライグス
まるで、無数の巨人が立ちはだかっているような、巨大な樹木が立ち並ぶ森林を超えると、そこには大きな町が広がっていた。
「ようやく着いたな、随分かかっちまった」
ヴァルドレッドさんは、若干くたびれた様子で町を眺めている。
無理も無いだろう。
三日間歩きっぱなしな上に、途中で数えきれない程の凶悪なモンスターに遭遇しては、その都度ヴァルドレッドさんが撃退してくれたのだから。
いや、むしろ三日間ロクに休憩もせず、凶悪なモンスターの相手ばかりしていて、少しくたびれる程度で済む方がおかしな話だ。
「さぁ、早いとこ宿を取っておこうぜ」
言って、僕とヴァルドレッドさんは町の入り口へと急いだ。
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町の入り口は、銀を彫刻して作られた、煌びやかな女神の像と植物のアーチに囲まれた、絢爛な門だ。
「相変わらず、派手な趣向してやがるなぁ」
言って、ヴァルドレッドは門の片側を手で押した。
ゴウンという重い音と共に、門は向こうの町を少しずつさらけ出していく。
「……すごい人混みですね」
門の向こうは、賑やかな喧騒で溢れていた。
声を張って客寄せに精を出す商人達。ギリギリの価格まで値段交渉している旅人。親にモノをねだって駄々をこねている子供など。
「こんくらい普通だ普通、さぁ早く行こうぜ!」
ヴァルドレッドはロウの右手を掴んで、先を急ぐ。
一応、ヴァルドレッドは王国との戦で行方不明という事になっている為、彼女自身できる限り目立つ行動はしたくないのだろう。
もっとも、身に纏っている豪華絢爛な鎧のおかげで否が応にでも目立つのは自明の理なのだが。
二人は行き交う雑踏をかき分け、なんとか懐に優しい価格の宿を探す事に成功した。
出費はなるべく安く抑えるのが、旅の基本である。
「はぁ〜! ようやく一息つけるぜ」
部屋に入るやいなや、部屋に備えつきのベッドに勢いよく飛び込むヴァルドレッド。
ロウはその様子を、せめて鎧くらい外しましょうよと言いながら扉を閉め、ジッと見ていた。
しかし、彼女は身に纏う鎧など気にする素振りすら見せず、無邪気にベッドで跳ねながら笑っている。
「やっぱ、ベッドはフカフカに限るなぁ〜!」
満面の笑みである。
その時、部屋の扉がコンコンとノックされた。




