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月を染めゆく緋色のベルベット  作者: 藍スミレ
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だからこそ

 しかし、だからこそ引けない物もある。


「……爺さん、俺は別に許してくれなんて微塵も思ってねぇし、思うつもりもねぇよ」


 ヴァルドレッドは机に置いた巾着から金貨(コイン)を一枚取り出し、指で弾いてガインに送る。

 空中で表と裏を繰り返しながら放物線を描いていくコインを、ガインはそのゴツゴツに角ばった右手で難なく受け取った。


「………こりゃあ」


 握った掌を開き、受け取ったコインをガインは見つめる。


「俺はもう呪われてんのさ」



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