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月を染めゆく緋色のベルベット  作者: 藍スミレ
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してやられる

「いや、だから俺は……」


 ガインはその意思はないと、改めてかぶりを振ろうとした。

 しかし、ヴァルドレッドは間髪入れずに店の店員を呼びつけ、新たに注文を言い渡していく。

 全てこの老人の支払いで、と付け加えながら。


「なっ! お前っ!」


「これで嫌でも帰れなくなったなぁ、おっさん!」


 満面の笑みでしてやったりとした表情の元大騎士。

 もしもガインが逃げようものならば、すかさずこの大騎士はガインを指差して、食い逃げなどと冤罪をかぶせようとしてくるのだろう。


 そうなれば商売の信用に関わる。

 もはやガインに同席以外の選択肢などない。

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