名前
次回からは、ここに色々説明などを書こうと思います。
どうぞ宜しくお願いします!
緩やかな傾斜の続く九十九折の道を、白髪の少年と煌びやかな鎧を纏った騎士は歩いていた。
「意外に逞ましいんだな、お前」
少年は大きめの袋を背負いながら、けれど軽い足取りで、煌びやかな騎士の横を歩いている。
少年の体格は、決して恵まれた方ではない。
いや、むしろ普通の子供よりも一回り程小さいかもしれない。
「元奴隷ですからね、前はこれの三倍の荷物をまとめて持ってましたよ」
小柄な体格にそぐわない怪力を発揮する少年に、煌びやかな騎士は感嘆の息を漏らした。
なんなら、途中で少年ごと担いで町まで行こうか、などと一考していた騎士だが、どうやら杞憂に終わるらしい。
「あと、できれば名前で呼んで欲しいのですが……」
申し訳なさそうに要望を伝える少年に対して、煌びやかな騎士は、じゃあお前もなと交換条件を提示した。
もう既に、少年は奴隷ではないのだ。
そういう意味合い持った、彼女なりの配慮と優しさの現れなのだろう。
少年はその条件に若干戸惑い、指を何度も絡ませながら、やむなく承諾した。
「わっ分かりました。 ……ヴァルドレッド、さん」
視線を下横へ逸らしつつ、頰を赤らめながら彼女の名を呼ぶ白髪の少年。
「おう、よろしくな! ロウ!」
ロウと呼ばれた少年は、元気な声でハイと返した。
♢
不思議な感覚だ。
今まで奴隷として生きてきて、名前で呼ばれた事なんてただの一度もなかった。
同じ奴隷仲間からも、ご主人だった奴からも。
ましてや、人を呼び捨てで呼ぶなんて考えもしなかった。
当時、僕ら奴隷は番号で呼ばれていた。
番号だけが、僕らの存在を示すただ一つの称号だった。
だが、僕らは極力その番号を呼ばれないように日々を過ごす。
当然だ、番号を呼ばれる時なんて、仕事でミスを犯して鞭で叩かれる時と、誰かに売られた時、もしくは個別の仕事が入った時だけなのだから。
番号を呼ばれて良い事など一つもない。
毎日、自分の番号が呼ばれないよう神様に祈ったり、仕事でのミスが起きないよう仕事に神経をすり減らすのが常だった。
名前なんて大嫌いだ、無くていい。
今までそんな風に思っていた。
「あ、あの! ライグスまでは、あとどのくらいかかるんですか?」
僕は熱くなった顔を隠すように下を向いて、別の話題を振る。
「んー、まぁ二、三日はかかると思った方がいいな」
彼女は僕の表情を見て何かを察したのか、僅かな笑みを浮かべて、僕の背負ってる袋を奪った。
「交代で運ぼうぜ、その方がお互い楽だろ?」
そう言って彼女は、僕の前を早足で進んでいく。
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