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月を染めゆく緋色のベルベット  作者: 藍スミレ
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腐っても大騎士

 踵を返し、店から出ていこうとするガイン。

 幸いにも、二人は食事に夢中でこちらに気づいていない。


 気分転換に来た店で、鬱憤の原因との対面など冗談ではない。

 今ならば、何事も起きる事なくこの場を立ち去っていける筈だ。

 そう思っていた。


「ん? おお、ジイさんも飯に来たのか!」


 腐っても大騎士。

 床が軋んだ僅かな物音にもすぐさま反応する辺り、常人とは比べ物にならない警戒心と用心深さが窺い知れる。


 ガインは舌打ちして、立ち止まった。

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