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新たな町
ほのかに鼻腔をつく、焼けた鉄の香り。
悠々と空へ上ってゆく黒い煙。
「ここが……」
硬い金属を槌で忙しなく叩く音が聞こえる。
高温で焼かれ、紅蓮に染まった金属が、冷却水を蒸発させながら沈んでいく。
「ここなら、お前に相応の物が作れるだろ」
言って、ヴァルドレッドは町の入り口へ歩いていく。
町の入り口は、無数のレンガを積み重ねて作られた半円型のゲートとなっている。
全体的に簡易的な作りのように見えるが、実際は一つ一つのレンガが、この町の刀匠達と錬金術師達の技術の結晶であり。
あらゆる衝撃を与えても決して崩れず、揺るがずを何十年と証明し続けている。




