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ついえて
もはや返答すらも難しい。
隙間風のような弱々しい呼吸音が、レイスの口から漏れていく。
これ程瀕死の重傷を負わされれば、もはやありったけの魔力を聖剣に流し込んでオーバーロードさせるなど、不可能な芸当である。
それは言ってしまえば、小さな袋に大量の水を一方的に流し込むようなもの。
容量を超えた分の水は、逃げ場を求めて逆流しようとする。
その逆流しようとする魔力を、外側から押さえつけるには、強力無比な肉体の支えなくしては成り立たない。
もう打つ手はない。
徐々に目から光が失われていく、かつての同胞。
肉体は既に事切れ、空を仰ぎ、ただひたすらに残り僅かな時が過ぎるのを待つ。
人の死に貴賎はない。
誰であろうとも、平等に死は訪れる物だ。
「じゃあな……戦友」




