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月を染めゆく緋色のベルベット  作者: 藍スミレ
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務め

「……あぁ」


 血がゴボリと、湧き水のように口から溢れる。

 手先の感覚は既になく、もはやそこらに落ちている石ころにすら等しい。


 変わらない。


 彼女の顔は何一つ変わっていない。

 共に戦場を駆け抜けた頃と何一つ変わっていない。


「……ふふ」


 思わず笑みが零れる。

 ついさっきまで忌々しく思っていた彼女の笑顔は、今では陽炎の如き優しさに溢れているように感じる。

 このままこの世を去っていくのも悪くない。


 少なくとも、勝敗は決したのだ。

 多少業腹だが、最後は騎士らしく散っていくのも騎士の務めかもしれない。

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