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執念
「おの……れ…」
レイスの睨みは、より一層鋭くなっていく。
犬歯をむき出し、眉間に皺を寄せ、今にもヴァルドレッドの喉元に喰らいつきそうな形相である。
そんなレイスを、だがヴァルドレッドは哀れむような目で見据えていた。
彼とて分かっているのだ。
もう既に瀕死の重傷を負ってしまった自分には、万に一つの勝ち筋も残されていないだろうと。
ならば、残された選択は一つのみ。
我が身をかえりみず、最後の力を振り絞って、目の前の敵もろともこの世から消し去るのみ。
手段としては、体に残っているありったけの魔力を聖剣に注ぎ込み、オーバロードを起こした聖剣で辺り一面を吹き飛ばすのがいいだろう。
無論、聖剣とレイス自身は粉々に吹き飛んでしまうが、この際そうも言っていられない。
心底、憎き相手にやられるくらいなら、道連れにしてでも亡き者にしてやる。
それがレイスの選択であり、覚悟であった。




