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それでもなお
まるで溶けたバターをナイフで断ち切るが如く、破城の聖剣はレイスの片腕を容易く断ち切った。
「ぐっっっ!?!!」
なくなった腕からの出血はない。
断たれた傷口は、破城の聖剣が纏う超高温の熱で、一瞬で焼け焦げてしまったからだ。
ブスブスと、血肉が焦げる匂いと黒い煙が、斬られた腕の断面から立ち昇ってゆく。
レイスの額と全身から、瀧のような汗が次々と浮かんでは流れ、浮かんでは流れを繰り返す。
思わず、小さな呻き声が漏れた。
だが、まるで傷口を鑢で擦られているような火傷の痛みに耐えながら、全身に重りのようにのしかかるストレスに耐えながら、レイスはなおも剣の柄を握る。
執念だ。
もはや、国の為ではなく、仲間の為ではなく、自分の不甲斐ない過去の象徴を、今この手で消し去らんとする断固とした意思。
それだけが、今のレイスを突き動かす原動力に他ならない。




