17/101
一閃
ヴァルドレッドはすかさず、ガラ空きとなったレイスの懐へ剣を走らせた。
ガジュッと、凄まじい高熱を帯びたヴァルドレッドの破城の剣が、触れたレイスの懐の鎧を一瞬にして溶解させる。
しかし、レイスは咄嗟に後ろへ一歩退いた為、致命傷を与えるまでには至らなかった。
再び、二人は距離を置いた。
レイスは斬られた腹の傷口に手を当てて、痛みに喘いでいる。
しかし、隙は一切見せない。
ヴァルドレッドを睨む双眸は、決して死人のそれではなかった。
だが、彼の得物は既に亡くなっている。
半端な敵であれば、それでも十分に事足りるだろうが、相手は歴戦の大騎士ヴァルドレッド。
そのような、半ば鉄屑と化した物では到底敵う筈もない。
「終わりだ」
終末を告げるベルのように、ヴァルドレッドは宣言する。




