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一振り
時間はない。
一刻も早く彼女に近づかなければ、脱水症状に陥って完全に勝機を失ってしまう。
「やむを得ないか」
目の前に広がるは燃え盛る炎の海。
この大海を渡りきって、ヴァルドレッドとの接近戦に持ち込む以外、彼に選択肢はない。
残り十二メートル。
大海には、ランダムに炎の槍が突出しては消えを繰り返している。
「我が騎士道に誉れあれ!」
駆ける。
オレンジと赤色が占める熱の海をひた駆ける。
湧くように上がる熱で、目がほとんど開かない。
呼吸をする度に喉が灼けていく。
残り八メートル。
髪が次第に焼けていく。
視界がグニャグニャに歪む。
残り四メートル。
「……へぇ、お前にそんな根性があるとはな」
残り二メートル。
「覚悟!」
剣を頭より高く上げ、渾身の力で振り下ろす。




