38/39
エピローグ
しばらくしてから、学校が始まった。
和花は家を出る。
「行ってきまーす」
朝早くに家を出る。
夏祭りに走った夏休み。真っ白な宿題を一週間で片付けるのには無理があった。
和花は欠伸を噛み殺す。
もう、スイもガクも視えない。つまり、もう神と関わることはない。
考える度、切なさが胸を過る。
だけど、寂しくはない。きっといつだって和花の傍で見てくれているのだろうって思えるから。
残暑が厳しい中、和花は一歩を踏み出した。
「おせーぞ、遅刻する気か?」
いつも通り、学ランの内側にピンクのパーカーを着て、黄緑のイヤホンを付けた颯太が手を振ってくる。
「今いくよ」
神が視えなくたって、和花の日常は変わらない。
神を視ることが出来ずとも……。
「本当にそう?」
和花の耳に杏の声が聞こえた。
蝉がけたたましく鳴き出した。
何処かで風鈴のなる音が聞こえた。
和花は立ち止まり、そっと後ろを振り向いたのだった。




