舞衣ちゃんセンパイ(5)
◆登場人物◆
・岡本千夏:高校三年生、文芸部部長。一人称は「わたし」。ちょっと舌足らずな喋り方の小柄な女の子。お茶を淹れる腕は一級品。受験生だが、部の雑務の他、入学してきた新一年生の勧誘活動も行っている。
・高橋舞衣:舞衣ちゃん。文芸部の二年生。一人称は「あっし」。身長138cmのロリータ体型。変態ヲタク少女にして守銭奴。ついたあだ名が「文芸部の守銭奴ロリ」。忍に「センパイ」と呼ばせてこき使っている。
・那智忍:弟クン。文芸部の新一年生。しずるの弟。一人称は「ボク」。しずる同様に背が高い美形男子で、細々した事にもよく気づく紳士。姉のことを異常に大事に想っている。
・望月泰平:泰平クン。忍のクラスメイトで、文芸部の新一年生。一人称は「僕」。しずるを慕って入部した。その為、彼女が部活に来ない時にはサボりがち。対策として、千夏は彼を雑用係にした。
・那智しずる:文芸部所属の三年生で忍の姉。学業優秀の上、長身でスタイルも申し分のない美少女。
ある日の昼休み、わたしは一人で図書室内を歩いていた。
受験勉強の参考になる本を探していたのもあったが、そろそろ部活で『読書会』を始めようと思ったからでもある。
部員全員で同じ本を読んで、感想や意見を交わす『読書会』こそ、文芸部の本来の活動と言えた。
去年から舞衣ちゃんが首を突っ込んでいるような、写真集やブロマイドなどを作って売りつけるのは、文芸部の活動とは言えない。違う。決して違う。間違っている。その事を、新入部員も含めて皆に理解して欲しかったのだ。
(うーん。去年も色々やったけれど……。最初は、志賀直哉の短編だったっけ。今回も短編からにするかぁ。だとしたら……)
わたしは、頭を悩ませながら書架の間を徘徊していた。
そんな時、
「ほら、グズグズしてないで、さっさとやるっす」
「えっ……、いや、ここ図書室ですよ、センパイ」
「構うことはないっす。弟クンは、文句ばっかり垂れてないでさっさと屈むっす」
「……もう。しょうがないですね。分かりましたよ、センパイ」
と、聞き覚えのある声のやり取りが耳に入ってきた。
嫌な予感がしたものの、わたしは本棚の向こう側へ回り込んでみた。案の定そこに居たのは、舞衣ちゃんと弟クンだった。床に屈み込んだ彼に、今まさに舞衣ちゃんがのしかかろうとしているところだ。
「あーあ。またこんなところで、弟クンを襲ってる。舞衣ちゃん、少しは自重してよ」
二人の様子に呆れ返ってしまったわたしは、そう言って彼女を諌めた。
「あっ、千夏部長。奇遇っすねぇ。こんちわ」
こちらに気が付いた舞衣ちゃんは、あっけらかんとしてそう言った後、素知らぬ振りで弟クンの肩によじ登ろうとしていた。
「あっと、……お、岡本センパイ。こ、これはですねぇ、……えと、不純なことではなくって、……えっと、なんて言ったら良いか……」
小柄な女子高生に踏みつけられた詰め襟の男子は、濃紺のスカートの布の向こうで顔を赤くしながらも、そんな風に弁解を続けていた。
「あーっと、分かってるよ、分かってる。またぞろ、舞衣ちゃんの踏み台にされてるんでしょ。弟クンも苦労してるよね」
大ちゃんと距離を置くようになってからこっち、背の低い舞衣ちゃんは、替わりの『踏み台』? っていうか『手下』? を探していたのだ。
そこで白羽の矢が刺さったのが、百八十センチ近い身長を持つしずるちゃんの弟クン──那智忍クンだった。 姉の強制力で弟クンを文芸部に引っ張り込んだのをいいことに、舞衣ちゃんは自分のことを『センパイ』と呼ばせて、まさしく舎弟の如く従えるようになったのだ。
「ほれ、弟クン。さっさと立ち上がるっす」
学ランの肩に座り込んだ舞衣ちゃんが、足元の彼に発破をかけた。
「はいはい、分かりましたよ、センパイ。立ち上がりますから、気をつけて下さいね」
半分諦めたような口調で弟クンが応える。屈んでいた両足に力を込めると、ゆっくりと書架を伝うように立ち上がり始めた。
「どうです? センパイ、落ちないで下さいよ」
しっかりと腰を伸ばしきったところで、彼はそう言うと、頭の上にチラと視線を向けた。
「……!」
その途端、弟クンは驚きの表情を見せて俯いた。顔が赤い。
「どうしたっすか。小柄で可愛らしいあっしの事が『重い』なんて言ったら、ブチ殺すっすからね」
そう言うボブカットの少女は、もう彼の肩の上で立ち上がっていた。
腰の上の方で留めているためか、スカート丈は短い。そこから覗く太腿にはシミもなく、あくまで滑らかで、男子と見紛うくらいに快活な彼女とは不釣合いに見えた。足元はと見ると、黒のソックスが生足の肌色との間にコントラストを成していて、うら若き少女の脚を魅力的にしていた。
図書室内での空調は柔らかい微風であったが、彼女の腰を包んでいる紺のプリーツスカートは、ひらひらと翻って、どうしてもその奥にあるものを惹起させようとする。
(ははぁ、弟クンは純情だからな。舞衣ちゃん程度のチラリでも、赤くなっちゃうんだ)
どうやら弟クンは、舞衣ちゃんの見てはいけないモノが目に入ったらしい。
姉のしずるちゃんをしょっちゅう着替えさせたり、下着まで丁寧にお洗濯している割には、他の女性への免疫は無いようである。
そんな彼にとって、実姉の世話を焼くのと、部活のセンパイの面倒を見るのと、どちらが重いのだろうか? かける天秤が壊れそうな難問のような気もする。
「あっ、有った有った。これこれ、これっすよ」
そうこうするうちに、舞衣ちゃんは目的の物を見つけたのだろう。本棚から一冊の本を取り出した。
「あ、舞衣ちゃん、本を探してたんだ。どんな本?」
わたしは、彼女の興味を引いたものが何なのかが気になって、訊いてみた。
「これっすよ、部長。鷗外の短編集。来週あたりに、『読書会』をやってみたくって」
この言葉に、わたしは心底驚いていた。
(あ、あの舞衣ちゃんが……、まともな部活動をしようとしている。これが驚きでないなら、何と言えばいい!)
「す、凄いよ、舞衣ちゃん。ちゃんと文芸部らしい事を考えててくれたんだね」
本来の部長であるわたしの仕事を、お金儲けにしか興味が無く、『文芸部の守銭奴ロリ』との異名を持つ舞衣ちゃんが考えてくれていたとは。
「一年経って二年生になると、舞衣ちゃんも成長するんだね。わたし、嬉しいよ」
嗚呼、感動のあまり、目から心の汗がこぼれそうだよ。
「へ? なんすか、部長。別にそんな大層なことじゃ無いっすよ。今度、仮入部してくれる女の子達に、良い印象を持って欲しいだけっすよ」
彼女は、詰め襟の肩に立ったまま、弁解めいた返事をした。
「それでも構わないよ。うん、読書会。いいね。鷗外をチョイスしたところも、点数高いよ」
(これまで、「舞衣ちゃんはお金儲けの事しか考えてない」って思ってたけど、ちゃんとした文芸部の一員なんだ。わたしも、部長として頑張らなくっちゃ)
しかし、そんなわたしの心情が実はメルヘンであることが、彼女の次の言葉で分かった。
「なんせねぇ、今度仮入部に確保した娘達は、すっげぇ上玉なんすよ。もろ文学少女っぽいのから、元気系巨乳キャラとか、幼馴染系構ってちゃんまでと、大豊作。これを手放す事になるのは、絶対に避けなければならないっす。ブロマイドと写真集の売上確保こそが、部の最大の使命っすからね」
「…………」
図書室の書架の隙間に居たとはいえ、わたしはあんぐりと口を開いたまま、二の句が告げられなかった。頭の中も真っ白で、舞衣ちゃんへのお説教の言葉どころか、何をどうすればいいのかすら思いつかなかった。
そんなわたしのどこかへ吹っ飛んで行った意識を取り戻すことが出来たのは、こんな声がかけられたからだった。
「岡本部長ぉー、こんなところに居たんですかぁ。探したんですよぉー」
少し幼くて頼りなさげな声は、もう一人の一年生──泰平クンであった。
「コピー用紙と、プリンタ用のトナーカートリッジを全色二セット分。ちゃんと買ってきましたから、早く置き場所を教えて下さいよぉー」
しずるちゃん目当てで入部した彼は、彼女が来ないとすぐに部活をさぼってしまう。そこで、わたしは、泰平くんに考えつく限りの『雑用』を割り振って、こき使っていたのだ。勿論、彼の頑張る姿が『しずるちゃんの好印象につながる』ことを、これでもかと言うくらいに刷り込んである。
(あっ、そうだった。昨日の夕方に頼んでおいたんだっけ。図書室の中に探しに来たってことは、部室には誰も居ないのかな?)
だいたいの事情を察して、わたしは彼の次の用事を何にしようかと思考を巡らせ始めた。
「何だぁ。誰かと思ったら、泰平クンじゃないっすかぁ」
そんな時に上から降り注いだのは、舞衣ちゃんの声だった。
わたしが首を上に捻ると、彼女は未だ弟クンの肩の上にいた。しかも、さも偉そうに腰に手を当てて立ったままの姿勢で、高みからわたし達を見下ろしている。
「わっ、舞衣ちゃんセンパイ。一体何やってんすか。スカートの中、丸見えっすよ」
(嗚呼、泰平クン。わたしや弟クンが敢えて黙っていたのを、ストレートに口にしてしまうなんて。君は、もう少し発言に気をつけた方が良いと思うんだな)
新たな登場人物は、場の空気が全く読めていない。今までなら、頭を抱えてこの場にへたり込んでいるところだが、こんな時こそ、わたしが最年長者として事を収めないと……。
しかし、そんなわたしの思慮なんてものは、実は最初から求められていないモノだった。
全くもって平気の平左の舞衣ちゃんは、
「んー、泰平クンも思春期の男の子だねえ。今どきパンチラくらいじゃ、小学生も喜ばないっすよ。ねぇ、弟クン」
頭上からいきなり話題を振られて、
「えっ? あ、いや、……はい」
彼も言葉に詰まっていた。まぁ、これは仕方がない。弟クンは紳士だからね。
「まぁ、シノブは初だからなぁ。それより『それ』、エロいっすよ。舞衣ちゃんセンパイは、いつもはべらんめぇだから、ギャップ萌え? ってヤツっすね」
彼女達は恥ずかしがるどころか、話がヲタク談義になろうとしていた。
「おっ、これが分かるとは。さては泰平クン、『隠れヲタ』だねぃ」
舞衣ちゃんは弟クンの肩で屈むと、彼の頭の上に腰を降ろした。必然的に弟クンの頭はスカートの中に隠れてしまう。
「うわっ、センパイ。前が見えないですよ。あ、危ないからしゃがみますよ」
多少狼狽えた弟クンは、舞衣ちゃんを落とさないように、そろりそろりと腰を屈め始めた。
「しっかし、シノブも約得だなぁ。舞衣ちゃんセンパイみたいなロリータキャラは、希少なんだよ。そんじょそこらじゃ、なかなか居るもんじゃないんだから。尤も、最高の女性は、しずる姉さんに決まっているけれどね」
(当たり前だ! 舞衣ちゃんみたいなのが三人も四人もいたら、気が変になっちゃう。それどころか、平和な学園生活があっという間に崩壊してしまうよぉー)
お調子者の泰平クンも、実はわたしを悩ます問題児の一人だった。
(しかし、どうして文芸部にはちゃんとした部員が集まらないんだ? わたし? やっぱり、部長のわたしの普段の行いが悪いからなの? あああ~、どうすりゃいいと言うんだよ)
結局の所、わたしは両手で頭を抱えてその場にしゃがみ込んでしまった。場をなんとかしようなんて思考は、とっくの昔に次元の彼方に弾き飛ばされていたからだ。
「もう、タイヘイも大概にしろよ。分かってんだろうな。姉さんには、こんなこと喋るなよ」
顔に引っかかりそうになっているスカートの布を持ち上げながら、微妙な立場の弟クンが念を押して口止めをしていた。
「わぁーってるよ。僕だって、しずる姉さんには好印象を持っていて欲しいからな。それに、シノブは友達だし」
泰平クンの『友達』の意味は、弟クンの思っているのとは違うような気がした。しかし、それに気がついているのかいないのか、
「頼むぞ、ホントに」
と、彼は本当に困り果てたという表情で応えていた。
そんな下級生達の会話を吹き飛ばすように、
「はあぁぁぁ!」
と、わたしは気合を入れ直して、すっくと立ち上がった。
突然の事に、三人の視線がわたしに集中する。
「もう分かったから。部室に戻るよ、皆。分かってるかどうか知らないけど、ここ、図書室の中だから」
これで、部長たるわたしの尊厳が回復したかどうかは分かんない。しかし、一旦流れを断ち切ってコイツらを隔離しておかないと、今度は何を始めるか分かったもんじゃない。
「泰平クン、お買い物ご苦労さま。荷物、片さなきゃね。そっちの二人も手伝うんだよ」
わたしは、そう言って書架の間から出ようとしていた。
「えー、面倒臭いっすよぉ。そんなの一年に任せましょうや」
わたしの背中に、ダレ切った言葉が投げかけられた。
「わたし、『手伝ってね』って言ったよね」
振り向く必要はなかった。少し声の音程を下げるだけでいい。それだけで伝わる筈だよね。
「……分かりました……っす」
今度は神妙な声が聞こえた。そうそう、これでいい。
わたしは、先に立って本棚の間から抜けると、図書室の中を早足で部室へと向かった。
図書準備室の扉の前で、わたしは一旦立ち止まると、後ろを振り向いた。三人がちゃんと着いてきているかが心配だったからだ。
だが、そこに立っていた影は二つしかなかった。いや、ちょっと正確じゃないな。
一方は泰平クン。そしてもう一方は……、
「舞衣ちゃん、何やってんのさ。弟クンに肩車なんかさせて」
わたしの言葉通りだった。見るからに面倒臭そうな顔をした彼女は、黒い詰め襟の上に陣取っていた。ご丁寧に両手には上履きを片方ずつ引っ掛けて。
(おいおい。ここまでずっと肩車で来てたのかよ。ううう……。絶対、変な噂になっちゃうよぉ)
あまりにも傍若無人な舞衣ちゃんの振る舞いに、わたしは血の気が引く思いだった。
「どしたっすか? 千夏部長、顔色が良くないっすよ」
標高百八十センチ以上から投げかけられた言葉には、あまり心がこもっていなかった。
「う、うん。だいじょぶ。だいじょぶ、……だから」
わたしは、ようやっとそれだけ答えると、部室のドアを開けて、するりと中に入り込んだ。
全員が入口をを潜って扉が閉まるのを確認すると、わたしはつかつかと中央のテーブルまで向かい、両手をその天板に叩きつけた。
<バッシンッ>
結構大きな音がした。それなりに、わたしの手の平も痺れていた。
「あ、あのね、舞衣ちゃん。お願いだから、校内では──最低でも図書室の中だけでも、も少し大人しくしてもらえないかな」
テーブルに押し付けた手に体重を預けたまま、わたしはそう言った。自分でも声が震えているのが分かった。
「えー、大人しくしてるっすよ。ねー、弟クン」
(声の聞こえる角度からして、コイツは未だ肩車をされたままだな)
わたしは意を決して振り向くと、右手の人差指で舞衣ちゃんを指差した。
「そーやって、弟クンにベタベタして、下僕のように使ってるところだよ。いい齢の男子と女子がそんな風にくっついてちゃ、風紀が乱れるでしょうが」
ここまで言っても、舞衣ちゃんは弟クンの頭に顎を乗せたまま、不思議そうな顔をしていた。
一方の弟クンは、赤らめた顔を斜め下に向けたまま黙っていた。そう。それが普通の反応だよね。そうでしょう。
「まぁまぁ、岡本部長。そんなに騒ぐほどのことじゃないっしょ。そもそも、舞衣ちゃんセンパイに、女っ気を感じろってのが無理な話で。肩車程度じゃ、誰も気にしないっすよ。なぁ、シノブ」
泰平クンの言葉は、わたしを落ち着かせようとしているのだろうか? それとも、しずるちゃんに自分の良い噂が伝わる事を願っているのだろうか? もう一人の一年生は、仲裁めいたことを始めようとしていた。
「コラコラ、泰平クン。今のは聞き捨てならないっすよ。それは、あっしに魅力が無いっ、ということっすか」
弟クンの頭の上からの返事は、少し揶揄するような調子が含まれていた。
「いやいや、ここで言う『魅力』は、しずる姉さんのような成熟した大人の色気のことじゃなくって、中性的なロリータ的って言う意味っす。この『魅力』があるんで、誰も舞衣ちゃんセンパイにかないっこないんす。これ、ホント」
対する泰平クンも、調子に乗って話を合わせてきた。二人は目を合わせて、お互いの真意を確認でもしあったのだろうか? 同時に「ニッ」と笑みを浮かべると、
「いやぁ、キミは話せるねぇ、泰平クン」
「いえいえ、舞衣ちゃんセンパイには敵わないっすよぉ」
と言って互いを見合わせると、『アッハッハ』と高笑いをした。勿論、彼女は弟クンの上に乗ったままだ。
「も、もういいよ。わたし、疲れちゃった。……ちょっと、お茶淹れてくるね」
心身ともに疲弊してしまったわたしは、そう言ってその場から逃げ出すように部屋の奥に向かった。
「あ、岡本センパイ。お手伝いしましょうか?」
弟クンの声が聞こえたが、わたしは、今は一人にして欲しかった。それに彼が着いてくるということは、必然的にその上に鎮座している舞衣ちゃんも一緒ということである。そもそもわたしは、そんな奇天烈な状況から逃げ出したくてお茶を淹れに行くのだから。
「だいじょぶ。それより、その間に三人でお片付けをしていてくれると、た、す、か、る、ん、だ、け、ど、なっ」
振り向かずに、わざときつい口調でそれだけを言うと、わたしはそそくさと奥に引っ込んだ。あんなのに、いつまでも付き合ってられるか!
「ふぅーう」
溜息を吐きながら戸棚を開くと、茶葉やコーヒーの香りが漂ってきてわたしを包んでくれた。
(何か、生き返るなぁ。いっその事、部長は舞衣ちゃんに任せちゃって、わたしはお茶汲み担当専任にしてもらえないかなぁ)
現実から逃避したくて、力の抜けるような考えが脳内を巡る。
(こんな時、しずるちゃんだったら、どするんだろう?)
わたしの脳内に、丸渕眼鏡をかけた長い黒髪の美少女の姿が浮かんだ。だが、彼女の表情は薄ぼんやりとしていて、その真意をわたしは測りかねていた。




