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脇役剣聖、キャンプは続く

 それから、ゆっくり時間をかけての~んびり王都へ向かった。

 最近、激戦続きだったし、仕事も忙しかったし……特に言わなかったけど、サティやエミネムも疲れ気味だったしな。

 王都では戦いもあるし、この馬車の旅で少しは癒されて欲しい。

 というわけで、王都まであと数日のところで……俺とサティは釣りをしていた。


「あの師匠……なんで釣り? というか、王都に行くのに、さすがにゆっくりしすぎじゃ……」

「いいんだよ。少しはのんびりしないとな。それに、この辺はけっこう釣れるし、晩飯も豪華になるぞ」

「おお、それは期待……あ、なんか引いてます!!」


 サティの竿に反応あり。

 サティは竿を引くと、なかなか大きい川魚が釣れた。

 魚を針から外し、川に漬けている網籠に入れ、餌の虫を付けて再び川へ。

 一連の流れがスムーズにできるようになった。俺の指導の賜物だね……と、俺もアタリ来た。


「よっと……お、けっこうデカい」

「わあ、さすが師匠です!! あ、また来た!!」


 サティは嬉しそうに竿を引き、勢いのあまり魚が外れて逃がすのだった。


 ◇◇◇◇◇◇


 さて、大漁大漁。十五匹釣ったところで釣りをやめて馬車へ。

 そこでは、エミネムがエスナから包丁の使い方を習っていた。


「こ、こう……ですね」

「そうそう、指を切らないようにね。最初は難しいと思うけど、慣れると……」


 エスナは、野菜を「ストトトト!」と素早く刻む。エミネムは目を輝かせていた。


「わあ、すごい……!!」

「あはは。ところで、貴族のお嬢様なんだろ? 料理を覚えたいって、どういう風の吹き回しだい?」

「……その、やっぱり今の時代、貴族令嬢でも料理くらいはできないと」

「……はは~ん? 領主様だね?」

「ッ!!」


 エミネムがビクッとしたところで、俺とサティが割り込んだ。


「おーう。下ごしらえ中か? じゃ、こいつも頼むわ」

「えへへ、大漁です!! 焼き魚~♪」

「お、いいね。焼き魚と煮付けにするか。領主様、手ぇ貸しとくれ」

「おう。よしエミネム、交代するぞ」

「ま、まってください!! その……こ、このままエスナさんのお手伝い、したいです」

「ん? ああ、俺はいいけど……」


 エスナを見ると、ニヤニヤしながら俺を小突く。

 よくわからんけど……まあ、任せろって言うなら任せるか。


「じゃ、晩飯の支度も頼む。サティ、少し俺と剣合わせるか」

「はい!! よーっし、がんばるぞー!!」


 俺とサティは木剣で軽く剣を合わせ、剣筋が鈍らないようにする。

 そうしていると、魚の焼ける匂いや、ふわりと柔らかな煮付けの香りがしてきた。

 俺は木剣を下げ、サティに言う。


「サティ、今日はここまで。お前は水浴びしてから戻って来い」

「はーい。ふぃぃ、汗いっぱい掻いちゃいました。あ、師匠、戻るならエミネムさんとエスナさんも呼んでください。みんなで水浴びします!!」

「おう。わかった」


 相変わらずサティは元気いっぱいだ。

 戻ると、夕飯の完成まで間近。エスナとエミネムに水浴びするように言い、残りの仕上げは俺が担当……女三人が戻り、夕飯となった。

 今日は、魚の塩焼き、野菜と魚のスープに、魚のスパイス煮付け、あとはパンだ。

 かなりのごちそうに、サティが目を輝かせる。


「じゃ、食うか」


 さっそく焼き魚を食べる。

 ……うん、塩が利いてて美味い。ハラハラと白身がほぐれ、たんぱくな味わいが広がる。


「おいしい~!! んん、幸せですねえ」

「あっはっは。サティは面白いねぇ。ほれ、スープも飲め飲め」

「はい。んん、こっちもおいしい~!!」

「確かに美味い……あ、エミネムが味付けしたんだったな。さすがだな」

「は、はい!! えへへ……」


 エミネムが照れているのが可愛いらしいな。団長が見たことのない笑顔だぜ。


 ◇◇◇◇◇◇


 その日の夜。

 今日はサティと一緒に夜の番をしている。


「…………」


 現在、サティは無言で双剣の手入れをしている。

 ルプスレクスの牙で作った双剣、そういや、聞いてなかったな。


「なあ、その双剣って名前とかあるのか?」

「あ、はい。右手の方は『冥剣スコル』で、左の方は『狼刀ハティ』です」

「ほう……いい名前だな」

「はい。なんというか……握った時に、これだ!って感じで浮かんで」


 右の剣は長く、左は少し短い。どちらも片刃剣で、切れ味は言わずもがな。

 器用なサティは、雷と磁力、そして両手の剣を使い分けて戦う……なんというか、自分のスタイルを見つけ、さらに『臨解』と『神器』を覚醒させた。

 はっきり言って、もう七大剣聖を名乗ってもいいかもしれん。ラストワン、アナスタシアの今がどんなレベルか知らんけど……ヘタしたら、あの二人と互角くらいかも。


「よし終わり。うん、綺麗になった」


 だけどまあ、七大剣聖というには風格がなあ……ランスロットですら、十三歳くらいの時すでに強者の風格を漂わせていたんだが。

 サティは強くなった。でも、根本的なところが変わっていない。

 それがサティの強さなんだが……なんというか、子供っぽいのだ。


「あ、師匠!! あの~……寝る前ですけど、甘いの食べていいですか?」


 子供だわ。

 うん、まだまだ七大剣聖の名前は重い。

 俺が引退できるのはもうちょい先かな……まあ、最後にデカい仕事もあるし、椅子を譲るのはその仕事を終えてからかな。

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〇脇役剣聖のそこそこ平穏な日常。たまに冒険、そして英雄譚。 3 ~自称やる気ゼロのおっさんですが、レアスキル持ちの美少女たちが放っておいてくれません~
レーベル:オーバーラップノベルス
著者:さとう
イラスト:Garuku
発売日:2025年 12月 5日
定価 1430円(本体1300円+税10%)

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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