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寝取られ追放から始まる、最強の成り上がりハーレム~追放後、自由気ままに第二の人生を楽しむことにした~  作者: 剣竜
第八章 孤島の決闘

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第九十話 あの少女

 

「ああ、どうしてこんなことに…」


 そう言いながらさまよう少女、メリーラン。

 イレーネとともに王国騎士団に捕縛された彼女。

 牢獄への移送中、イレーネとマディウスの戦闘に巻き込まれ、そのまま逃亡。

 国の辺境へと逃れていた。

 今の彼女は手配中の身となっていた。

 刑を受ける前に何らかの方法で脱走した、という扱いになっているのだった。


「ガーレットさんももういない…帰る場所もない…」


 辺境の村を歩きながら隣国を目指す。

 この国ではメリーランはお尋ね者。

 故郷に帰ることもできない。

 比較的情報伝達の遅い田舎から隣国へ逃れる。

 それが彼女の選んだ選択だった。


「はあ…」


 全ては自分の選んだ選択だ。

 ガーレットについていったことも後悔はしていない。

 しかし、なぜこんなことになってしまったのか。


「リオン…」


 ふと、リオンの名を呟いた。

 なぜ彼の名前が出たのかはわからない。

 しかし…


「私は、どうすればいいんだろう」


 これから自分はどうすればいいのか。

 隣国に逃れた先で何をすればいいのか。

 メリーランは答えのない自問を繰り返した。


「…あのころに戻りたい」


 無意識のうちに口から言葉が出る。

 だが、それは叶わない願いだ。

 昔の日々に戻りたい。

 他愛無いことでガーレットと遊んでいたあの頃に。

 どこで間違ってしまったのか。

 どうしてこうなってしまったのだろうか…

 メリーランの瞳から涙がこぼれそうになるも、それをこらえる。


「…何か食べよう」


 空腹を感じた彼女は、近くの酒場に入ることにした。

 客はメリーランと、他に数名だけだった。

 奥の席で食事をしている者たちがいる。

 メリーランも適当に料理を頼む。

 今後のことを考えて、あまり金は使いたくない。


「後で山越えのための食料も買わないと…」


 そう言いながら料理を待つメリーラン。

 と、その時だった。

 メリーランの目の前に大きな音を立てて酒の瓶が置かれた。

 驚く彼女。

 その横には大柄な男が立っていた。

 大柄で筋肉質な男、かなりいかつい顔をしている。


「よお、アンタ一人かい?」


「え、ええ」


「ここは酒場だ。一人じゃあ楽しくねえだろう?


 話し相手が必要なら俺が相手になるぜ?

 ニヤリと笑いながら男が言った。

 だが、メリーランは興味なさそうに視線をそらした。


「結構です」


「おいおい、そう言うなって。仲良くやろうぜ」


「私に触らないで」


 男はメリーランの肩を掴むも、冷たい声でそうメリーランは告げる。

 それに怒りを覚えたのか、男はそのまま彼女の腕をつかんだ。

 そしてそのままねじ上げる。


「痛っ!」


「ふんっ!ガキが調子に乗るんじゃねえよ!」


「ちょっと!離して…!」


 メリーランは男に抵抗するも、びくともしない。

 男は彼女の髪を掴み、ぐいっと引っ張る。

 そして顔を近づけて言った。


「俺の女にならないか? そうすれば命は助けてやるぜ」


「嫌よ!」


 メリーランは男の手から逃れようとする。

 だが、男は彼女を離してくれなかった。


「まあそう言うなって。悪いようにはしないさ」


 男はニヤリと笑うと、今度は彼女の胸に手を伸ばす。

 目的は明白。

 だが…


「昼間っからギャーギャー騒ぐな」


 店の隅から叫ぶ声がする。

 先ほど食事をしていた青年だ。

 その声を聞き手を止める男。

 メリーランを突き飛ばし、その青年の元へと詰め寄る。


「ああッ!俺が何しようが勝手だろうが!」


「メシがマズくなる」


「だったら二度とメシが食えない体にしてやろうか?」


 そう言いながら男が大きな鉈を取り出す。

 戦闘用の鉈だ。

 しかし、青年は全く動じない。

 席に座ったままだ。

 ゆっくりと食器を置き、男に言う。


「お前が?」


「え?」


 その一瞬だった。

 青年は、男の首筋に刀の刀身を押し当てた。

 一瞬の抜刀術に何が起きたのか理解が追い付かぬようだった。


「死ぬぞお前」


「…あ、ああ」


 ゆっくりと席から立ちあがる青年。

 彼の左腕にある大きな火傷の跡を見て、男は思い出した。

 この青年が何者であるか、ということを…


「お、お前まさかザンガか!『皆殺しのザンガ』…!?」


「ん、ああ。まあそう呼ぶやつもいるな」


「ひ、『百人斬り』のザンガ!し、失礼しました!」


 そう言って男は荷物を抱えそのまま逃げていった。

 店内に静寂が戻った。

 青年はそのまま席に戻り、食事の続きを始めた。


「あの、ありがとうございます」


「ん、ああ。気にするなよ」


「皆殺しって…」


 そう言いながら食事を続ける青年、ザンガ。

 先ほどの男は彼のことを『皆殺しのザンガ』と呼んでいた。

 皆殺し、とは恐ろしい呼び方だが…

 と、その時…


「あー、あんまり気にしなくてもいいよ。それ」


 そう言いながら、ザンガの連れの少年が言った。

 後ろの席で食事をしていた彼が、話に割って入ってきた。


「半分嘘だから」


「百人斬りは本当だ。あとは勝手に噂に尾ひれがついたんだよ」


 連れの少年とザンガが答えた。

 なるほど、そういうわけか。

 メリーランはそう思った。

 そしてあることを思いついた。


「あの、もしよければ…」


「あ?」


「お話だけでも…」


 メリーランは考えた。

 なんとか彼らのチームに仲間に入れてもらえないか、と。

 少なくとも実力には自信がある。

 ここで会うことができたのも何かの縁だ。

 だから…と。

 それをザンガに伝えた。


「お願いします!」


「そう言われてもな…」


 困った表情をするザンガ。

 いきなり言われて困惑もしているのだろう。


「ザンガさん!…えっと…あと」


「ガルグ」


「え?」


「そのガキの名前だよ。『黄金槍のガルグ』って聞いたことないか?」


 以前、ガーレットから聞いたことがある。

 黄金の槍を使う凄腕の槍使い、『黄金槍のガルグ』という男がいると。

 名前から勝手にゴツイ大男をイメージしていたメリーランだったが、こんな細身の少年だったとは…


「どう思うガルグ」


「僕はいいと思うけど、ザンガさんは?」


「オレは反対だ。余計な奴はいらねえ」


「…そういえばリーダーは?」


「あの女ならさっき買い物に行ったきりだ。リーダーなんだから、買い物はこいつ(ガルグ)にまかせりゃいいのに…」


 そういうザンガ。

 と、そこにちょうどパーティのリーダーの女が帰ってきた。

 意外にも、そのリーダーはザンガよりも一回り若い少女だった。

 両手に大きな荷物を持ちながら、後背で店の押戸を開ける。


「う~ん…」


「手伝おうか?」


「別にいいよガルくん、ありがとうね」


 ふと、メリーランがその少女の背中に既視感を覚える。

 そしてその声。

 メリーランが戸惑っていると、少女が振り返った。

 その表情には、見覚えがあった。

 いや、見覚えがあるどころの話ではない。

 だってその少女は…


「き、キョウナ!」


「ああ、ええ!メリーラン!?」



面白かったと思っていただけたら、感想、誤字指摘、ブクマなどよろしくお願いします! 作者のモチベーションが上がります! コメントなんかもいただけるととても嬉しいです! 皆様のお言葉、いつも力になっております! ありがとうございます!

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