表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
寝取られ追放から始まる、最強の成り上がりハーレム~追放後、自由気ままに第二の人生を楽しむことにした~  作者: 剣竜
第五章 リオンとガーレット

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/91

第四十五話 エリシアの過去

 

 ガ―レットたちはまた別の場所。

 荒野を進むリオン、アリス、シルヴィ、エリシア。

 この砂漠の向こうにある国が目的地だ。

 リオンたちの住む王国から、荒野と砂漠を超えた先にある国。

 その国の王都にある魔法学園に手紙の入った小包を届けるという目的のために。


「ふう…」


 リオンたちは今、向かって進んでいる最中なのだが…

 リオンは後ろを振り返る。

 そこには疲労の中を歩くエリシアの姿があった。

 彼女は肩で息をしながら苦しそうにしている。

 リオンもそれを心配して声をかける。

 だがエリシアは首を横に振った。


「大丈夫だよ、私なら問題ないから…ハハハ…」


 彼女の額には汗が滲んでいた。

 それを拭うと再び歩き始める。

 リオンも心配だったが、本人がこう言っている以上何も言えなかった。

 しかし無理をしているのは明らかだった。

 リオンは水筒を手に取ると、エリシアに声をかける。


「エリシア」


「なあに?」


「ほら、水」


 小首を傾げる彼女に水筒を差し出す。

 しかし彼女は首を振る。


「ううん。いらない」


「本当に大丈夫?無理はするなよ?」


「平気さ!私だって冒険者だからね!」


 笑顔を浮かべる彼女を見てそれ以上は何も言わなかった。

 確かに体力はあるし、戦闘経験もあるだろう。

 ただやはり不安ではあった。

 砂漠を進むリオン、アリス、シルヴィ、エリシア。

 リオンが皆より一歩前に出て周囲を警戒している。

 先頭を歩いているリオンが突然立ち止まる。

 それに気付いたシルヴィは慌てて駆け寄った。


「どうしたんだ?」


「あそこに何かある…」


 彼が指差す方向に目を向けると確かに岩陰に隠れるようにして小屋のようなものが見える。

 興味津々といった様子で走り出すエリシアの後を追ってリオン達も向かった。


「あれって人の家かなぁ?行ってみようよ!」


 扉の前に立つとノックをする。

 返事は無い、ドアを開けると鍵もかかっていないようだ。

 中に入ると埃っぽく薄暗い部屋の中にテーブルや椅子などの家具が置かれている。

 誰か住んでいるのかと思ったのだが…


「古びた家具ですね」


「誰も住んでいないみたいだ」


「家具に使用感はありますけどね」


「休憩用の小屋だろうな」


 アリスとシルヴィが言った。

 部屋の隅々まで確認したが人影は無かった。

 冒険者の休息のために作られた小屋なのだろう。

 部屋の中には机と椅子が乱雑に置かれていた。

 少しここで休憩していくことに。

 各々が荷物を置いて一息つく。


「なにも無いね」


 エリシアはそう言いながら椅子に座っていた。

 小屋内には他に何もない。

 シルヴィの言うとおり、休憩用の施設なのだろう。

 別の部屋には簡易的なベッドが置かれている程度だ。

 あとは、別の冒険者が残していったゴミくらい。


「まあ、そんなところなんだろうけど…ちょっと不気味じゃない?」


「そうだねぇ~」


 エリシアの言葉を聞いて同意するように呟くシルヴィ。

 確かに不気味な雰囲気がある場所だ。

 窓の外を見ると太陽はすでに沈みかけていた。

 そろそろ日が暮れる頃合いだし、今日はここで過ごすのもいいかもしれない。


「木材と、何か食料になりそうなものを探してくるよ」


「ボクも行こう」


 そう言って、エリシアとシルヴィは周囲を探索に行った。

 小屋の中に少しだけあった枯れ木と枯草。

 それを使って小屋から少し離れた場所で火を起こす。

 さらに食事の準備を始めた。


「お腹空きましたね」


「ああ、そうだね」


 アリスの言葉に同意しつつ、リオンは水の入った鍋を焚火の上に置いた。

 そして鞄の中から干肉を取り出す。

 干し野菜や果実もいくつかあったはずだ。


「これでスープでも作るか」


「はい、お願いします」


 リオンが料理をしている間、アリスは持っている薬を探っていた。

 もし何かあった時、薬の在庫が無くては困る。

 薬の数は性格に把握しておかなければならない。

 それを確認していた。

 その間に、リオンは乾いたパンにナイフで切れ目を入れる。

 そこに塩漬けの燻製肉を挟み、簡単な料理を作った。

 それから干した果物も取り出す。


「よし、こんなものかな」


 それと共にスープも出来上がったようだ。

 アリスがそれを人数分配る。


「いい匂いです」


「アリスも手伝ってくれてありがとう」


「いえ、これくらいしか出来ませんから」


 そう言って微笑む彼女。

 本当に良く出来た子だと、リオンは思う。

 この子がいて良かった。

 そんなことを考えている間に、夕食が出来上がる。

 と、そこにちょうどシルヴィとエリシアが戻ってきた。

 枯れ木と薬草、そして…


「はい、ヘビ!」


 そう言って木の棒で串刺しにしたヘビを渡すエリシア。

 まだ生きており、苦しそうに身体を動かしている。


「ちょっ!待って!いやいやいや!無理だから!絶対食べられないから!」


 そう言えば以前、エリシアは『毒を食べさせる』といった趣旨のことを言っていた。

 まさかそれはこのことなのか?

 それを思いだし、焦るリオン。


「えー?骨は多いけどまずくはないよ?」


「いやいやいや!そもそも毒とか持ってるかもしれないし!」


「大丈夫だよ、たぶん」


「いやいやいや!危ないよ!」


「冗談だってば。ちゃんと毒が無いヘビだから」


 必死に抵抗するリオンを見てエリシアはクスッと笑った。

 そして串刺しにしたヘビを焚火の脇に立てた。

 そのまま焼いて食べるつもりなのだろう。

 シルヴィは苦笑いを浮かべていた。


「ははは。ボクは食べられそうな植物を取って来たよ」


「うん、ありがとう」


 そう言ってシルヴィは食用の野草をリオンに渡した。

 長期保存が可能なものだ。

 これらは保管して明日以降に食べるとしよう。こうしてリオンたちは食事を摂り始めた。

 削り干し肉と野草のスープ、干し肉のパン、干した果物とそれと水だ。


「ん~美味しい!」


 そう言って満面の笑顔でスープを食べるエリシア。

 彼女は元気にヘビを食している。

 その隣ではシルヴィも同じようにヘビを口に運んでいた。


「あぁ、確かに意外とイケるね…」


「だろう?私も好きなんだ」


 どうやら二人とも問題なく食べているようだ。

 それを見たリオンも恐る恐る口に入れる。


「(…味は悪くないか)」


 それほど違和感はなかった。

 焼いたヘビをスープにつけて食べてみる。

 塩気もあり、スープとして飲む分にはそこまで不自然ではない。

 しかしやはり食感が独特だった。

 ゴリっとした歯ごたえがあり、噛み切る度に血の臭いがするのだ。

 だが、食べられないほどでもない。

 シルヴィが言ったようにクセになるような味わいだと思った。


「どうだい?」


「うん、いけるって感じかな」


 エリシアの言葉を聞いて正直に答える。

 するとシルヴィも同じような感想を抱いたようだ。


「そうだねぇ。でも、やっぱり普段の食事とはちょっと違うかもねぇ」


「慣れるまで時間がかかりそうだね」


「この国だと、あんまり食べる人いないからねー」


 エリシアはそう言いながら、またヘビに手を伸ばしていた。

 相変わらず食欲旺盛である。

 食事を終えてしばらくした後、小屋に戻ることにした。

 外はすでに真っ暗だ。

 月明かりだけが周囲を照らしている。


「じゃあそろそろ休もう。一応見張りを立てるぞ」


 交代で休むことにした。

 まず最初はリオンが見張ることになった。

 次にアリス、そしてシルヴィ。

 そして最後はリオンとエリシアという順番になった。

 エリシアは仲間になったばかりなので、しばらくはリオンが一緒に見張りをする。

 焚火の前で座る二人。

 そんな中…


「何をやってるんだ?」


 リオンがふと、声を掛けると驚いたように振り向くエリシア。

 その顔には驚きと共に悲しみの色が浮かんでいるように見えた。


「あれ見てたんだ」


「あれ?」


「満月、よく見えるんだよ」


 彼女の視線を追うと大きな満月が輝いていた。

 思わず感嘆の声を上げるほど綺麗だった。


「綺麗だな…」


「うん…」


 しばらく二人で月を見上げているとエリシアが口を開いた。


「ねえ、リオン君はどうして旅をしているの?」


 唐突な質問だった。だが何故だか答えなければならないような気がした。

 リオンはこれまで自分が辿ってきた道を思い返す。

 自分の居場所を求めて彷徨った日々のことを…


「今なら胸を張って言えるよ。俺には守りたいものがあるって…」


「へえー、リオン君もそういうこと言うんだね。なんか意外」


 クスッと笑う彼女にリオンは恥ずかしくなって顔を背ける。

 柄にもない事を言った自覚はあるからだ。


「な、なんだよ。別にいいじゃないか」


「ごめん、馬鹿にしたわけじゃないんだ。ただ嬉しかっただけ…」


 リオン達は再び空に浮かぶ満月に目を向けた。

 先程までよりも輝きが増したように見える。


「私も同じなんだよ。自分を変えたくて来たんだ」


 エリシアは自分の過去を語り始めた。

 物心ついた頃から両親はおらず、孤児院で育ったこと。

 そこでは毎日のようにいじめられていた事。

 そんな生活が嫌になり冒険者になったこと。


「私は逃げたんだ。あの場所から…」


 リオンは黙って聞いていた。

 彼女の話を邪魔してはいけないと思ったのだ。


「だからね、君の気持ちはよく分かるんだ。辛いよね」


「ああ…」


 リオンは何も言えなかった。

 彼女がどんな想いでここまで来たのか、リオンにはとても想像できなかった。

 ただ、リオンと同じだという事は分かった。

 微笑む彼女を見て思う。

 この笑顔をいつまでも見ていたいと。

 リオン達のいる小屋を照らす満月はまるで見守ってくれているようだった。

面白かったと思っていただけたら、感想、誤字指摘、ブクマなどよろしくお願いします! 作者のモチベーションが上がります! コメントなんかもいただけるととても嬉しいです! 皆様のお言葉、いつも力になっております! ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ