魔王の信条
私は、滅びの魔力を最大限引き出しながら、剣を構えました。
「魔法は、心そのものの形を表します」
心、魔力、魔導具、すべてが噛み合った時に発動する。
それが魔法。
ウィ―ザルソードには、無限に振れる『軽さ』を。
フレイソードには、すべての敵を『迎撃』する力を。
ミョルニルには、敵を『粉砕』する力を。
私は、望みました。
そして、今から変形する形態に願った思いそれは、
神すらも殺しつくす『滅び』の力。
聖剣変形「裏切者の義兄弟」
聖剣に埋め込まれたエンブレムが禍々しく光り輝きます。
聖剣全体に幾何学的な紋様が浮かび上がると、聖剣から邪悪な波動があふれ出しました。
「私の『剣』最強形態を受けてみなさい!」
あまりに凶悪すぎて、神々の戦いで使用すらされなかった剣です。
「よかろう。我が聖剣をとくと見よ」
王も聖剣を構えると、魔力を高めました。
魔力解放『八百万の神々』
神々の栄光に満ちた、自然との調和ある平和と繁栄をもたらすような魔力が放たれます。
聖剣変形「天の岩戸」
聖剣が光り輝くと、剣から黄金の鎧と盾が分離します。
王は、一瞬で防具を身に纏いました。
私は、気にすることなく、踏み込みました。
大きく踏み込み、盾に向かって聖剣を振り下ろします。
激しく聖剣が、魔法の障壁に阻まれます。
「我が聖剣は壊れない」
魔法効果『絶対防御』
あらゆる攻撃を防ぐ、魔法効果ようです。
私の剣を受けた王が、私に向かって剣を振るいます。
魔力解放『秩序宇宙』
左目のみが真っ青に光り輝きバングルに魔力が注がれていきます。
聖装変形「戦乙女の盾」
私の盾が、王の剣を受け止めました。
「たいした効果もなさそうだな」
私のアイギスの盾の魔法効果は、『魔法効果の増幅』防御効果を持った形態ではありません。
自身の魔力によって、強化し続けます。
「時間の問題だな。この盾は破れまい」
王は余裕そのもの、自信満々に語ります。
それでも私は、諦めることなく力を込め続けます。
サンヴァ―ラの未来は私にかかっています。
「応えなさい。私の魔力に」
誰よりも純粋に心を込めて。
全てを倒せ。
どんな邪悪な力であっても、未来をこの手に掴むため。
なにもかも切り開け。
ラグナロクの魔力が暗黒の力を加速させていきます。
「我が聖剣を壊せるものか」
私の剣のあまりの凶悪さに王が語彙を強めました。
「私の剣は、壊すのではなく滅ぼすもの」
聖剣が、『すべて滅べ』と声なき声をあげています。
「つまり、この剣の魔法効果は」
『魂破壊』
剣から放たれる暗黒の力が、王を覆いつくしました。
「どんな攻撃であろうと――いや、なんだこの力は――ッ!」
王の顔から余裕が消え失せる。
体は確かに、一切傷ついていない。
魔法効果『絶対防御』が解けたわけでもない。
だけど、聖剣から放たれる邪悪な力が、心を蝕み続ける。
魔力が、心から放たれるのであれば、その心が力を失えば。
カシャン。
小さく音を立てて、王の持つ聖剣が、元の姿に戻る。
奇跡の力は、現実へと帰る。
神が祈りを聞き入れてくれなくなった時に頼るべきは自分自身のみ。
「さあ、魔法なしで勝負といきましょうか」
私は、剣を持つ手に力を込めて、王の剣に振るいました。
カキン。
剣と剣が交わると、王の剣があっさり飛んでいきます。
カラカラカラ。
落ちた剣が地面にあたり転がっていきます。
「つまらないですね。これで終わりですか?」
私は、剣を携え、ゆっくり王に迫ります。
「ま、待て話せばわかる」
「ああ、そうですね。話せばわかると思います。だけど、私はあなたと話したくない」
私は話し合いの場を設けました。
なのにストークムスは何度もサンヴァ―ラに攻め入ろうとしてきます。
私は魔王。いまさらこちらから歩み寄る理由はありません。
「一度は許す――そうであろう?」
そう私は教わりました。
人は誰しも間違います。
だからこそ、一度は許さなければいけません。
「そうです。そして、二度目は絶対許さない」
繰り返す者には、成敗を。
それこそが、サンヴァ―ラの信条です。
「冥土で後悔なさい」
私は王に向かって容赦なく剣を振り下ろしました。




