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聖剣魔王~嫌いな勇者は殲滅です!~  作者: 名録史郎


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神炎と魔炎

 なぜ戦うのか。

 それは、目の前に敵がいるから。

 そのくらい簡単でいい。


「上品なイデオロギーはいりません」


 なぜなら、私は魔王。

 正しくなくても、ただ勝利を願う者。


 押さえ込んでいた心を解き放ちます。

 赤と青が綺麗に混ざり合い、瞳が紫に輝きました。


魔力開放『 混沌(カオス)創生(グニルズ・ブルースト)


 全てが滅び去りし終わりを告げるような魔力が私の内から放たれます。

 私は、すべての魔力を掲げた剣に、注ぎ込みました。


聖剣変形「勝利の剣(フレイソード)


 音を立てながら、聖剣が変形していきます。

 赫赫と輝くエンブレムが、さらに激しさを増していきます。


「魔王に逆らう愚かな人間は、すべて滅ぼしてあげます」


 全ての悪意は私の物。


 全てよ滅べ。


 願うは、滅びの先にある新たな世界。


聖剣変形「炎の巨人の大剣(スルトソード)


 フレイソードが、魔力『ラグナロク』の力を帯びて、真の姿を顕現させました。

 空気が一気に熱をはらみます。

 剣が周囲を埋め尽くすほどの炎を上げると、何もかもを飲み込んでいきます。


「その程度」


 グララも、負けじと魔力を高めました。


魔力解放『八百万の神々(ヤオヨロズ)


 数多の神々がひしめくような魔力が放たれる。


聖剣変形「火之迦具土神(ヒノカグツチ)


 髪が風でなびくと、揺らめく炎と化しました。

 徐々に人の形を失っていくと、グララの全てが燃え盛る輝きを放ちました。


「勝負です!」


 神々を生み出すかのような炎と、世界を滅ぼしつくすような炎が激突します。


「俺を炎で殺せると思うなよ!」


 赤き月の光と、周囲を埋め尽くすほどの炎で、世界は厄災の赤に染まります。


「いいですね! デートといきましょうか」


 使えば使うほど、湧き上がっていく魔力。

 そして、込めれば込めるほど、剣からは炎が放たれる。

 色は、赤から漆黒へ。


「俺の炎が」


 漆黒の炎が、グララの炎に喰らいつき、全てを無に帰すように、飲み干していきます。


「ははは、火力が足らないようですね」


 『ラグナロク』は神すら殺しつくす魔力。

 神が群れた程度の魔力でどうにかなるものではありません。


「さあ、とどめを、むっ?」


 唐突に、スルトソードから炎が消えて、フレイソードに戻ってしまいました。


聖剣変形「天羽々斬剣(アメノハバギリソード)


 飛び込んできた男が振り下ろしてきた刀をギリギリで躱します。


「兄者、助太刀します」


 随分と重厚な見たことのない鎧を着た男です。


 燃やし尽くそうと、フレイソードにラグナロクを注ぎますが、反応しません。


「また、アンチ魔法ですか」


 せっかく気持ちよく全力を出していたのに、水を差された気分です。


 奥をみると、赤と白のおかしな服をきた女もいます。

 アンチ魔法の出所のようでした。

 どことなくリリサに似ていて、姉妹でしょう。


「ストークムスの王族勢ぞろいですか」


「戦は、勝てばいいんだよ」


「群れた程度で私に勝てるとでも?」


「兄者、こいつは?」


「サンヴァ―ラの魔王だそうだ」


 男は訝し気な顔をしました。


「魔王はあの男じゃないのか」


「あの男? ああ、フィルクのことですか?」


 ということは、以前フィルクがあしらったストークムスの勇者とは、この男――つまり王子サーカのことでしょう。

 剣の切れ味は、鋼鉄を斬れそうなほど良さそうですが、動きがたいしたことありません。

 特に脅威にはなりそうにない。


「あの男は、どこにいる?」


「なにを言ってるんですか? フィルクはいつだってお留守番ですよ」


「魔王が一人でパーティーも組まずにこんなところにいるっていうのか?」


「当たり前です。魔王はパーティーなんて組みません」


 魔王は孤高。

 一緒に戦ったりしません。


「フィルクが国を守ってくれるから、私は安心して戦えるんです」


 遠く離れていても、心は一つです。

 お互いに、微塵も負けるなんて思っていません。


「たとえ、あの男がいくら強くても、我が国のいくつもの隊に分かれた軍を一つ一つ潰すようなことなど」


「ふっ、ははは」


 思わず私は噴き出してしまいました。


「なにがおかしい」


 なにがだなんて、なにもかもすべておかしい。


「だって、まるでフィルクに直接戦ってもらえると思っているみたいですから」


「なにを言って」


「なぜなら……」

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