表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖剣魔王~嫌いな勇者は殲滅です!~  作者: 名録史郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/31

魔王の国の御伽噺

 僕らは鹿に引っ張られながら、隣の町を目指す。

 運転はニルナさんだ。


 本当に万能だ。


 僕との戦闘後も一切休まず動き続けている。

 どんな体力なんだろう。

 

 日も暮れかかっている。

 魔王に連れ去られていくというのに、子供たちはお腹いっぱいで幸せそうに寝ている子が多い。

 姫も僕の隣でぐっすり寝ている。

 

 僕の隣には、牢屋であった年長だった男の子がいた。


「君は寝ないの?」


「だって、お兄ちゃんは伝説の勇者パーティーなんだよね?」


 勇者パーティーというより、魔王パーティーだ。

 ほとんど僕は役にも立ってない。


 それに、僕は王に任命されただけで、伝説の勇者というわけでもない。


「君はどんな勇者の伝説を知ってるの?」


「んーよくはしらないかなぁ」


 なにも伝わっていないじゃないか。

 なにが伝説の勇者だ。


「あ、でも、斧のおじさんは、御伽噺を語ってくれたよ」


 斧のおじさんというのは、子供たちを捕まえていた盗賊の頭領……ニルナさんの国のどこかの村長だ。


「どんな物語?」


「一番よく語ってくれたのは『腹黒姫と海賊王』かな」


「うん?」


 題名からして不穏だ。


「どんな話?」


「えーとね」


◆ ◆ ◆ 


【腹黒姫と海賊王】


 むかしむかしあるところに、美人でしたが、ものすごくわがままで、腹黒いお姫様がいました。


 くる日もくる日も、あれが欲しい。これが欲しい。と毎日のように言います。


 手をやいていた王様は、お姫様と結婚した勇者を次の王にすると宣言しました。


 たくさんの勇者が城にやってきました。


 お姫様は、一番強い勇者と結婚したいと考えました。お姫様は勇者たちに言います。


「ワタクシの頼んだものを持って来てくれたら、その人の妻になりましょう」


 お姫様は、だれが持ってきてくれるか、ワクワクしながら言いました。 


「あらゆる人を洗脳する腕輪。不老不死の秘術が書かれた魔導書。空を飛ぶ羽根ペン。リヴァイアサンの七色に輝く鱗。ドワーフが作った宝剣。これらの宝いずれかを持って来た者と結婚してあげる」と。


 だれもが言いました。


「いや、そこまでして、結婚したいわけではない」と。


 怒ったお姫様は、自分で探し出した洗脳の腕輪で、勇者をみな洗脳してしまいます。


 くる日もくる日も勇者達に残りの宝を探させました。


 そして、ついに全ての宝のありかがわかりました! 


 なんと宝は、海賊の王が、全て所持していたのです。


 姫は、思いました。


 海賊を洗脳してしまえば、世界も宝も全て自分の物だと。


 そして、自ら海賊にさらわれました。


 海賊が、捕まえた姫にキスをしようとしたとき、姫は、腕輪を使い、海賊を洗脳しようとしました。


 ですが、できませんでした。


 なんと海賊は、世界最高のアンチ魔法の使い手だったのです。


 海賊は、全てを見透かしたようにお姫様に言いました。


「俺は嫁に良識は求めない。美人ならばそれでいい」


 悪事を働こうとしたのに、一切お咎めがなかったお姫様は海賊に惚れてしまいました。


 それからとういうもの、真実の愛に目覚めたお姫様は、海賊と結婚し末永く幸せに暮らしましたとさ。


 めでたしめでたし。


 おしまい。

 

◆ ◆ ◆ 


 物語を聞き終わっても不穏だった。

 腹黒姫は、本当に腹黒い。 

 

「うーん? めでたしかな?」


 めでたしになっていいのか、そのお姫様……。


「すごい話だね」


 あれ? でも……。

 この御伽噺、サンヴァーラの国民が語ったということは、もしかすると……。


「これ、サンヴァーラの御伽噺ですよね? ニルナさん、知っていますか?」


 僕がニルナさんに、声をかけると、少し視線だけ送ってきた。


「知っているというか、私の祖先の話ですね」


「祖先?」


 言われてみれば、サンヴァーラの姫ということは、そういうことになるのか……。


「ということは、事実なんですか」


「そうですよ。祖先に海賊王がいます。それに、ほとんどの宝に心当たりがあります」


「おとぎ話の宝にですか?」


「ドワーフが作った宝剣は、私が使っている聖剣のことですね。コスモス、ラグナロク、トリシューラ他にもいろいろな魔力に対応しています」


 ニルナさんは、手綱を握ったまま、片手で剣を引き抜くと、いろいろな形状の剣に変形して見せる。


「うわぁ。すっごい!」


 男の子は、目を輝かせた。

 強力な魔導具でも、そんなに変形するものは珍しい。

 それを完璧に使いこなす人もほとんどこの世にいないだろう。

 

「腕輪は、私がつけているこれですね」


 ニルナさんは、今度を腕につけている腕輪を見せてくれた。


「えっ?」


 確かおとぎ話の中では、あらゆる人を洗脳するって……。

 

「洗脳魔法は使ったことありませんが、使えるはずです」


 使えるんだ。


「あとは防具に変形します。基本私は、剣で防ぐので、あまりしません」


 僕の攻撃も完璧に剣でさばいていた。


「空飛ぶ羽根ペンは、私の婚約者フィルクが持っていますし、リヴァイアサンは海賊王であるおじい様が倒した竜ですね。宝物庫のどこかに鱗があった気がします。帰ったら大掃除しないと、踏んづけちゃうんですよね」


 伝説のお宝も、雑に放り投げてあるような言い方だ。


 というか、婚約者いるんだ。

 確かに左手の薬指に指輪がついている。

 今、気がついた。


「不老不死の秘術が書かれた魔導書だけよくわかりません。ルーンさんに聞けば何かわかるかもしれません」

 

「ルーンって古代の魔導書のことですよね?」


「ルーンは、人の名前ですよ」


「いや、だから、生きた古代の魔導書のことをルーンって言うんですよ」


「ルーンさん自体が魔導書みたいなもの……とでも言いたいんですか? そんな大層な人ではないですよ」


「どんな人なんですか」


「毎日お城でお昼寝しています。日向ぼっこが好きですね」


「へぇー」


 猫みたいな人なんだろうか。

 確かに、たいしたことなさそうだ。


「種族は吸血王の(ヴァンパイアロード)古代種(エルフ)です」


 ニルナさんがあんまりさらっというから、聞き逃すところだった。


「とんでもない人じゃないですか!」


 ダメだろう。そんな種族を掛け合わしたら。

 そもそも吸血鬼って日向ぼっこしていいんだっけ?

 でも、その人が古代の生きた魔導書(ルーン)で間違いない。

 

 そんな人をたいしたことないという、ニルナさんが一番とんでもない。


「なら全部家に、ありますよ」


「すげぇなぁ。お姉さん何者だよ?」


「私は、勇者のお友達です。落ち着いたら、私の家に遊びに来てくださいね」


 ニルナさんは、穏やかに言う。


「やったぁ。約束だよ」


 遊びにいく約束をした場所は、魔王城なんだけどなぁ。

 いいんだろうかと思いながら、楽しみにしている少年の顔を眺めた。

『腹黒姫と海賊王』はシリーズの短編にあります。

 

 他の聖剣魔王シリーズもよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ