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聖剣魔王~嫌いな勇者は殲滅です!~  作者: 名録史郎


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魔王の力

 僕らは、助けた子供たちの行く末を相談しました。


「和平交渉が終われば、私の国で引き取ってもいいんですが、ひとまずは、安全な場所まで連れて行きましょう。勇者、リリサさん、どこかあてはありますか」


 僕にそこまで権力はない。姫をみると、こくりと頷く。


「はい。もう少し大きな町に行けば、孤児院があります」


「では、そこに連れていきましょう」


 目的地は決まった。

 問題は、小さい子供たちもいるなかどうやって連れていくか。


「確か、町に馬車はあった気がするな」


 ニルナさんが、頷いた。


「じゃあ、引っ張りましょうか」


 うーん。なんでそうなるんだろう?

 見た目おしとやかなのに、発想が脳筋なんだけど。

 忘れかけたころに、やっぱりニルナさんは、魔王なんだと思い知らされる。


「三人で交互に引っ張ればたいしたことないですよ」


 僕はともかく、勝手に人数に含められた姫は、びくりと体を震わし、冷や汗を流しはじめた。

 というか、ニルナさんは一人で引っ張れるんだ。

 子供は10人以上いるんだけど、どうなっているんだろう。

 

「他の案にしませんか?」


 僕がそう提案すると、不思議そうな顔をした。


「えーと、他に簡単な方法は、なんですかね?」


 引っ張るのは簡単かなぁ?

 頭を使わないって意味なら簡単だけど。


 それでも、顎に指を当てて考えてくれる。


 しばらくすると、ピコン!と閃いたみたいな顔をした。


「代わりの動物捕まえてきますね」


 そういうと、すぐにいなくなった。


 行動力といい、決断力といい、とんでもなく早い。


 あっというまにいなくなったかと思うと、10分もしないうちに戻ってきた。

 ニルナさんは、大きな角の生えた鹿を捕まえてきた。


「似たようなものですから、こいつでいいですよね?」


「まあ?」


 いいのだろうか。

 鹿も、ニルナさんが見ると、全身を震わしておとなしくなった。

 本能的に危険を感じているらしい。


 とにかく移動手段は確保できた。

 あとは……。


「食料どうしますか?」


「任せてください!」


 ニルナさんは鞘から聖剣を抜くと掲げた。

 

魔力解放『創生(グニルズ・ブルースト)


 ニルナさんから、今までと違う世界の始まりを告げるような色鮮やかな魔力が放たれる。

 

聖剣変形「雷神の鉄槌(ミョルニル)


 戦いでは見ることのなかった、大きなハンマーに形を変えると、そのまま近くの海に放り投げた。


 ドーン。バチィ。


 大きな衝撃波と雷が落ちたような音が響き渡ると、魚がプカプカと浮かんできた。

 鎧が濡れるのも気にせずに、海に入ると魚を集める。


「ふふふーん」 


 鼻歌を歌いながら、魚のはらわたを抜いて、串に刺していく。

 準備が終わると、聖剣を地面に突き刺し、魔力を流し込む。

 

聖剣変形「炎の巨人の大剣(スルトソード)


 剣から炎が放たれて、魚がこんがり焼けていく。

 美味しそうだ。


 ……確かその剣は、僕を焼き殺そうとしていた形態な気もするけど。


 ニルナさんは、子供たちを集めると、焼き魚を子供たちにふるまっていく。


「一人分なら、釣りでいいんですけどね」


 子供たちに、ふるまい終わると、聖剣をシャベルのように砂地に突き刺し、穴を掘りだした。

 大きな貝が沢山掘れたので、また聖剣であぶりだした。

 

 そうかとおもえば、潮だまりに手を突っ込んで、うねうねしたよく分からない生き物を捕まえてきた。

 ナイフを取り出して、側面に切り込みを入れ、皮を剥ぎ、均等にきれいに切っていき盗賊たちが使っていた皿に並べて、柑橘系の果物の汁をかけた。


「はい、どうぞ」


 出された物をおそるおそる食べてみる。


 うーん。うん。

 柑橘の爽やかな味が広がり、謎の生き物がコリコリして、おいしい。


「……なんでもできますね」


 何もなかったはずなのに、どんどん子供たちの前にごちそうが並んでいく。


 もうなにもかも、力業で解決していく。

 とんでもないぞ。

 この人。


「なんでもはできませんよ。できることだけです」


 ニルナさんは、しれっとした顔で言った。


 うん。

 普通出来ない。

 絶対に。


「うーん?」


 姫は悪夢でも見ているかのように、うなされていた。

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