誤算
「黒田ぁ……お前やってくれたなぁ? この始末どう付ける気だぁおお?」
意気揚々と署に戻った黒田だったが課長が激怒している。普段は親しげに『クロ』と呼ぶのに今は『黒田』だ。
「えっ? 何のことですか? こっちはきっちりやりましたよ?」
「そうだよなぁ? お前が勝手にやったことだよなぁ? どういう手ぇ使ったのかは知らんけどよぉ。藤島ぁ死んだんだよ! なのになんで! あの薄らボケが生きてんだぁ! あぁコラぁ!?」
「えっ!? そ、そんな馬鹿な……俺は知りませんよ? ちょっと缶コーヒー買おうと降りたらいきなり藤島が覆面を出したんですから!」
二人の間ではそういうシナリオになっていたらしいのだが……
「ボケがあ! てめえ後ろのあのシートベルトきちっと付けといたんかぁ!? なんであのカスが助かってんだよ! おお?」
「あ……い、いやでもあそこってかなり深いし水温だって……」
「知るかあ! あいつは生きてんだよ! この落とし前どう付ける気だてめぇ!」
「生きてるって、じゃあ今どこに……」
「さっき弁護士から電話が、いや通告があったわ! 白浜組で保護してんだとよ! 検察に送致するはずのパトカーがなぜ突堤から海に突っ込んだのか納得のいく説明してくれってなぁ! どうすんだてめぇ!」
「そ、それは……」
「なあクロちゃん。お前懲戒免職と依願退職のどっちがいい?」
黒田に退路がなくなった瞬間だった。




