171/173
暖かい場所
「あ"ーくっそぉ……寒ぃのぉー!」
岸壁に上がった頭と次郎。もうすぐ春とはいえ、まだ海水は冷たかった。
「しっかしオメーほんっとツイてんなぁ。俺が来んにゃあ死んじょったでぇ?」
これまでの次郎の人生は明らかに不運なことばかりだが、土壇場で助けが来るのはある種幸運と言えるのだろう。
「帰るでぇ。風呂でも入らんにゃあやれんけぇの」
二人は服をしぼり、上半身は裸のまま車に乗る。
「ったくよぉ。朝っぱらから無茶させやがってよぉ。えげつねぇ引っ張られ方したって聞いてのぉ。現場行く前に差し入れでもしちゃろうと思ったらおめぇ。警察署から出てくるし覆面にゃあ乗るしよぉ」
どうやら頭に助けられたのは半分は運、半分はあの刑事達が無茶な連行をしたゆえだったらしい。
例えば昨日の朝、羽美が食事を届けた際に次郎が不在だったこと。妙に荒れた室内を見たことが理由だったのかもしれない。
「とりあえず今日からしばらくはうちに泊まれぇ。そん代わりぶち働かせるからのぉ」
次郎が何か温かいものを感じたのは、きっと車の暖房のせいだけではないのだろう。




