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開眼
その時だった。
渾身の一発が効いたのか次郎の目が開く。うっすらと、ほんの少しだけ。
「てめえ! 起きたんかあ! しっかりしろや! 起きねえとぶち殴るでえコラぁ!」
はっと、次郎の目が大きく開かれた。かと思えば激しく咳き込んでいる。無理もない。たった今まで呼吸が止まっていたのだから。だがそれでも海水を飲んでいなかったのは幸いだろう。
「ったくよぉ。手間ぁかけさせやがって。おう、てめぇで泳げや。手ぇ離すでぇ」
次郎は泳ぎが得意というわけではない。中学でも高校でも水泳の授業では常に最下位だった。しかし、浮くこともできるし泳ぐこともできる。今も次郎の手足は思う通りに動いているようだ。
次郎にしては、つい先程まで死にかけたとは思えないほど早い回復ぶりだ。
「おう。大したもんじゃあ。それにしてもよう上がってきたのぉ。よぉし、こっちじゃあ、来いや」
そう言って頭は泳ぎはじめた。




