159/166
4号車の罠
黒田は助手席のドアを閉めた後、ポケットに手を入れて何やらボタンを押した。
すると、覆面パトカーはやけにいい加速で走り出した。
自動販売機どころか、海へと向かって。
ここは突堤だ。道をまっすぐ進めば当然ながら海に落ちる。
車内では新人の藤島が何やら焦っているが、覆面パトカーはぐんぐん加速していく。
「くくっ、悪いな藤島。薄ら馬鹿なんかと心中させてよ」
車は止まらない。車内では藤島がブレーキを踏んだりサイドブレーキを引いたり、ハンドルを切ったりもしている。だが、車は無情にもまっすぐ進み続ける。
『この先海』『危険』などと書かれた柵や看板を撥ね飛ばしながら。
そしてついに、フェンスすら突き破り……黒い覆面パトカーは海へと飛び込んだ。何かを踏んだらしく、やけに高く舞い上がってから。




