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コーヒー休憩
覆面パトカーは走る。まだ混み始める前の国道を。
「ここ右に曲がったら海ですけど、いいんですね?」
「おお。こいつがどうしても海が見たいって言ってんだから仕方ないだろ? 少しでもこいつの口を軽くするためにはな」
供述は終わっているため、この期に及んで新たな自供など必要ないはず。口を軽くするも何もないはずだが。
「は、はぁ……」
交差点を右折する。ルートは海へと。
当の次郎は、この道がどこに向かうのかも分からなければそもそもどこに向かっているのかも理解していない。
覆面パトカーは突堤の入り口付近まで来た。その時……
「おおっと……悪い藤島、そこで止めてくれ。小便だ」
「はぁ、いいですよ」
「ふぅ、すまんな。おお、悪い。ついでにあそこの自販機でコーヒー買っといてくれんか? こいつの分もな」
「はぁ、いいですよ」
黒田が助手席のドアを閉めると、藤島はアクセルを踏んだ。ほんの50m先の自動販売機まで向かうにしてはやけに速度が出ているようだが……




