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  作者: 暮伊豆


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155/166

弁護士 辻

何度目になるか分からないが、藤崎彩花に接見の弁護士が来た。彩花は初回こそ自らの罪を真摯に訴えていたが、回を重ねるにつれ無駄だと悟ってしまっていた……


「やあ、彩花ちゃん。顔色がよくないねぇ。差し入れの桃とマンゴー、食べてないのかいぃ?」


藤崎家お抱えの弁護士、辻 剛次(つじ ごうじ)だ。


「食欲ないから……」


「でもいいのかい? このままだと彩花ちゃんは二十年ほど果物が食べられなくなるよ?」


「別に……私がやったことだから……」


「そうかも知れないね。でも彩花ちゃんね、それは絶対間違いなく100%、自分の意思でやったことだと言い切れるのかい? 難しい問題だよねぇ。でもね、心優しい君のことだ。次郎君のためを思ってやったことではない、だなんてとても言えないんじゃないかな?」


辻は敢えて分かりにくい言い方をしているようだ。


「べ、別に次郎は関係ないし……」


「うんうん、そうだろうとも。彩花ちゃんは心優しい女の子だからねぇ。次郎君を庇ってるなんて思ってないよ。ただね、少し気になることがあってねぇ。彩花ちゃん、君は次郎君のことが好きなのかなぁ?」


「べ、別に、あんな奴……」


「おお、そうかそうか。それならよかった。いやぁ安心したよぉ。だったらもう思い残すことなく刑務所で務めあげられるねぇ。二十年って長いんだよぉ? しかも初犯で殺人となると悪名高い府中特等獄圧刑務所、通称『特獄(とくごく)』行きになるんだろうねぇ。彩花ちゃん知ってるかい特獄ってさぁ?」


「べ、別に、どこでもいいし……」


「うんうん。芯の強い彩花ちゃんだものねぇ。どこの刑務所だろうとも立派に刑期を務めあげるだろうねぇ。地獄みたいな刑務所だから無事に出て来れるかどうかはともかくねぇ……偉いよ。あ、そうなると、万が一だけど出てこれた時って彩花ちゃんは四十歳ぐらいかな? はははは、可哀想に。人生終わりだね。もう子供も産めないし、誰からも相手にされない。たぶんお兄さんからも忘れられてるんだろうね。もちろん次郎君も結婚して幸せな家庭を築いてるんだろうねぇ。二十年だもんねぇ。うんうん」


「じ、次郎は、そんな……」


「あれ? 知らない? 次郎君って実はモテるんだよぉ? 例えば白浜組の美砂さんとかねぇ。いわゆる爛れた関係ってやつ? いやぁ羨ましいねぇ」


「そ、そんなわけ……」


「他にもあるよぉ? もしかして知らなかったのぉ? 次郎君てかわいい顔してるからねぇ。それはもうモテモテなんだけどなぁ?」


言い返すこともできない彩花。

これまでの接見でまともな会話は不可能だと理解した辻は攻め方を変えたらしい。全ては彩花を無罪放免にするために。

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普段はこんなのを書いてます。
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― 新着の感想 ―
まさしく「あの手この手」ですねい。 ……にしても差し入れでマンゴーとは……。 しかもきっと、1つでン千円ないしヘタすりゃ万とかの超高級品なんやろーなー……。(そこかよ)
そうきたか( ˘ω˘ )
うおおっ!精神攻撃がすごい!
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