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第17話

 8月9日の日の出と共に、日本海兵隊を主力とする9か国連合軍の北京城の城壁に対する猛攻が始まった。

(とナレーションが流れた)


「どんどん撃て。城門とその周囲の砲撃を集中しろ」

 内山小二郎大佐が、砲撃を指示する。

「砲撃の支援の下、工兵隊は爆破工作を行うぞ」

 林忠崇提督は、工兵隊を直々に指導して、城門近くの城壁を爆破しようと試みた。

 砲撃による煙が煙幕代わりとなり、工兵隊の爆破作業を容易にさせる。

(画面上では)数分の内に、北京城の城門とその周囲は破壊されて、大穴が開いてしまった。


「行くぞ。速やかに柴五郎中佐らを助けに行くのだ」

 まだ破壊による煙が立ち込める中に、斎藤一大佐は突撃を始める。

 その後ろには、斎藤大佐率いる第3海兵連隊の総員が続いていた。


 その更に後ろでは、北白川宮能久親王殿下が苦笑いをしながら、声を挙げていた。

「わしは突撃命令をまだ出していないのだが。今、斎藤大佐を引き留めたら、わしの命が無いな」


「邪魔をするな」

 斎藤大佐は、今や自分の愛刀となった葵紋越前康継を振るって、立ち塞がる敵を切り伏せていた。

 その後ろでは、部下の海兵隊員が臨機応変に銃撃等を行い、斎藤大佐らの突撃を支援した。

 だが、その一方で。


「何で大尉の私が、道化のように浅葱色の羽織を軍服の上に羽織って、新選組の旗を持っているのですか」

 土方勇志大尉がボヤキながら息を切らせて、斎藤大佐の後を続いていた。

「斎藤大佐からの命令だ。黙って従え」

 内心では笑い転げているのだろう、笑みを浮かべながら、その横を岸三郎少佐は付いていた。

 そして、画面が変わった。


「何事だ」

 東の方が異常に騒がしくなり、籠城軍を攻め立てていた義和団と清国軍の混成部隊が、急に崩れ出した。

 命を惜しむ者達が、急速に逃げ散っていく。

 柴五郎中佐と張徳令が並び、首を捻りながら異口同音に言っていると。

 その二人の視界に新選組の旗を持ち、浅葱色の羽織を羽織った男の姿が入った。


「あれは新選組の旗。会津鶴ヶ城であの旗を見たかった」

 落涙しながら、柴中佐が独り言を言う横で。


「土方副長」

 張徳令が絶叫していた。


「やはり」

 斎藤大佐が独り言を呟いた後で、目の前に最後に立ち塞がった義和団員を斬り捨てて、柴中佐の前に立って敬礼した。

 慌てて、柴中佐も答礼する。


「30年以上も待たせて、本当に済まなかった。宮様も林提督も待たせて本当に済まなかった、とおっしゃられている。間もなく駆けつけてこられて、自ら言われるだろうが、少しでも早く伝えたいと思い、私からも言わせてもらう」

 斎藤大佐が、柴中佐に言うと柴中佐は。

「いえ。この場でこの旗を見られただけで、あの時の想いが晴れるようです。それから、籠城を共に戦ってくれた軍人以外の民間人、それから中国人の方々にもお言葉を賜るようにお願いします」

 柴中佐は涙をあふれさせながら言った。

 斎藤大佐も思わずもらい泣きをした。


 土方千恵子の周囲からももらい泣きの泣き声が聞こえる。


 そして、斎藤大佐は張徳令の方を向いて言った。

「原田左之助さんですね。生きておられたとは思いませんでした」

「いや。私は」

 張徳令は言葉を濁すが、斎藤大佐は追い打ちを掛けた。

「土方大尉の姿を見て、土方副長と絶叫された。それでもシラを切られますか。どうして、中国人が浅葱色の羽織を着た土方大尉を見て、土方副長と叫ぶのです」


「バレてしまったか」

 張徳令、いや原田左之助は斎藤大佐に話しかけた。

「本当に生きておられたとは思いませんでした。それにしても、何故に中国人として生きておられたのですか」

「話せば長い話になる。聞いてくれるか」

「喜んで」

 原田と斎藤はそうやり取りをし、柴や土方、岸らは2人を取り囲んだ。

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