もふもふたちと、秋を感じる。
ちりり~…ん…
夕食後、もふもふたちと遊んでいると、ベランダのそばに下げている風鈴が外から入ってくる風で揺れた。
「そういえばここ数日、クーラー付けないで窓開けてるけど、ほんと涼しくなってきたな~」
開いたベランダの窓から時折風が入ってきて、風鈴をちりんちりんと揺らす。
私は風に誘われるようにして、ベランダ用のスリッパを履いてベランダに出た。すると、私と一緒にぬいぐるみたちもベランダにやってきて、ベランダの手すりにぴょんこぴょんこと飛び乗ってきた。
「ん~…風が少し冷たくなってるなぁ。なんかほんの少しだけ、風の中に秋の匂いがするな~…」
と、私が言うと。
「秋って匂いがしゅるんでしゅか?」
と、くまくまが聞いてきた。
「う~ん、うまく言えないけど、その季節になると空気や肌に当たる風で『ああ、今この季節っぽいな』って感じるんだ」
「へ~そういうもんなんだぁ」
と、うさろんは言う。
「僕たちは、匂いとかそういう微弱な変化とかは分からないですからね。人間て本当に不思議で素晴らしい生物ですね」
と、柴田さんは手すりにぶら下がりながら言った。
「いや、私からしたら、しゃべらないはずのぬいぐるみが歩いたりしゃべったりする方が、不思議で素晴らしいわ」
と、柴田さんに言った。
ベランダに凭れかかり、ベランダの手すりに頬杖を突きながら、夜空をぼーっと見る。空にはまだ、夏の雲…入道雲が佇んでる。でも、空気や風の匂いは秋のもので。
「…もうそろそろ、秋なんだなぁ」
そう呟きながら、私はぬいぐるみたちと微かな秋の気配を感じていた。
…のに。
「あっづぅ~…」
その翌日。朝起きると、昨日の秋の雰囲気はどこへやら。クーラーを付けなきゃならないほど、室内は夏のようにむしむしと暑くなっていた。
「昨日は涼しかったのにー!秋みたいな雰囲気、どこに行ったのよー!も~…」
「ママさん、暑そうですね…」と、スネービーが言う。
「ドンマイにゃ、母上!」と、ちゃとにゃんが言う。
秋になるのは、涼しくなるのはまだまだ先だな、と思う私であった………




