番外編 episode4 ─ ちゃとにゃん ─
今回はちゃとにゃん回です。ちょっと暗めな話ですが、読んでくださると嬉しいですm(_ _)m
我輩は茶トラ猫のぬいぐるみである。
名は「ちゃとにゃん」にゃ。
我輩は今、ほのか殿に段ボールに入れられて、お散歩中である。いや…「お散歩にいこうか」と、ほのか殿に言われて外に連れられたが…きっとまた捨てられるのだろう。
「ここでいいかな?」
着いたのは、見たことのない小さな公園。その公園の端っこにある木の下に、ほのか殿は我輩の入った段ボールを置いた。
「ごめんね、ちゃとにゃん。可愛いんだけどさ、落ち着きなくて毎日大変でさ。私じゃ、ちゃとにゃんの面倒が見れないから…誰か、優しい人に拾われて幸せになってね」
と、ほのか殿は我輩のことを撫でたり抱きしめたりすると。
「ほんとごめんね。さよなら…」
ほのか殿は目から雫を溢しながら、去っていったにゃ。
「ふにゃ~…眠いにゃ。段ボールは狭くて落ち着くにゃ。ちょっと寝るのにゃ…」
我輩は大きなあくびをして、その段ボールの中で丸くなって眠った。
人にあげられたり、こうやって段ボールに入れて捨てられたりすることが多かったので、我輩は慣れっこだった。
原因は、落ち着きがなかったりうるさいからみたいで。みんなどうしていいかわからなくなって、こうするみたいなのにゃ。
。.:*:・'°☆
「『ちゃとにゃんって名前です。可愛がってください』って…無責任だなぁ。でも私の家、ペット禁止なんだよね…にゃんこは飼えないんだよね、どうしよう─…って、この子ぬいぐるみじゃん!」
どのくらい、その段ボールの中に眠っていたのだろう。誰かの声がして、その声で我輩は目を覚ました。
「…んにゃ?」
「えーっと…ちゃとにゃん…君かな?ねえ君、私の家に来ない?家に君みたいなぬいぐるみがいっぱいいるんだ。私たちの『家族』にならないかな?」
我輩のいる段ボールを覗き込みながら、その人は言った。優しい笑顔だったにゃ。
「…かぞく?」
「そう、みんなで幸せに暮らそうってこと!…どう?」
「にゃー!かぞくになるにゃ!行くにゃー!」
と、我輩はその人に飛び付いた。その人は我輩が飛び付くと、ぎゅーっと抱きしめてくれたにゃ。
『家族』ってことばの意味はわからなかったけど、でもなんだか体があったかくなるようなことばで。
我輩はその人に─…今の持ち主である母上に抱っこされながら、家に連れていってもらったにゃ。
そこには我輩と同じような、しゃべって動くぬいぐるみがいて。そのぬいぐるみたちは、我輩のことを歓迎してくれたにゃ。
そして現在。
我輩は捨てられることなく、母上やくまくま殿たちと共に幸せに暮らしているにゃ。
みんなとよくケンカをしたりするけど、仲直りしたり、母上がみんなまとめて『もふもふぎゅっぎゅ!!』をしてくれたりするにゃ。
わからないけど、これが『家族』なのかにゃって。
前は、捨てられたり手放されたりしても何とも思わなかったけど、今もしそれをされたらとても悲しいと思う。みんなとお別れなんてしたくないって思う。
…みんなと、離れたくないって。ずっと、傍にいたいって思う。
「ちゃとにゃーん!もふもふぎゅっぎゅ♡」
「にゃ~♡」
もちろん、母上は絶対にそんなことしないけどにゃ。




