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78 ドレステルの戦い、その5です。

「はぁ・・・はぁ・・」


フルル=ゼルトは冒険者の街を走っていた。

運動が苦手なフルルは息も絶えだえなのだが止まってられないのだ。

ドレステルの森から離脱してからもう2時間近い。

紫煙花の秘薬は解毒剤を5時間以内に飲めば助かる。それは隊長の分身達による人体実験で証明されている。

とはいえ悠長に考えていることも出来ない。

一刻も早い助けが必要だ。

だから、走っているし、そもそもギルドにはまだ行ってもないのだ。

自身の経験で分かる。闇の幻獣などの特殊な魔物は普通の冒険者は敬遠するし、アステリアの祝福持ちが都合よくつかまる可能性は限りなく低い。

ギルドに行っても応援は間に合わない。フルルはそう判断した。

だから、フルルは別の方法を考えた。というよりフルルはタワワさん以外にもアステリアの祝福持ちを知っているのだ。

だから、かつて良く皆で食事をしていた料亭の女将さんにその人の家を聞き向かっているのだ。

昔、女将さんが風邪で動けない彼女に料理を持っていった。そんな話を聞いたことがあった。

女将さんはフルルが彼女に会いに行くことを驚いていたが教えてくれた。

正直、会いたい人じゃない。

向こうの方も自分には会いたくないだろう。

でも、フルルが考える中で唯一間に合う選択肢なのだ。迷っている暇はない。


「はぁ・・・はぁ・・・隊長の・・・馬鹿・・・」


今度こそ死なないのだと思っていた。

隊長は自分は安全な所にいて分身に戦わせる方法を徹底していたし、馬鹿っぽい言動と裏腹に事前の情報収集を重視していた。死なないという一点においてフルルが見てきた誰よりも優れた人だ。

だから忘れていた。冒険者ってのはそうゆう生き物だってことを。



これは隊長に出会う前の話しだ。


「おお、こんなちびっこが奴隷とはな、世も末だ。・・・よしちびすけ、おじさんが面倒みてやろう」

「まちなよガーク。店主が言っていただろ、このガキを加えたパーティーは三回も全滅しているって。縁起悪いじゃないかい」

「そんなこと言うなよダリア。別にちびすけが悪い訳じゃないだろう。たまたまさ」


二人の意見は対立したが、最後にはダリアという女の人が折れた。


「サルコーだ」

「メイリンよ。よろしくねおチビちゃん」

「ルーク」

「ルード」

「ルージュ、三人揃って・・・」

「「「ルーの三騎士」」」

「おい三馬鹿、ちびすけが怖がってるじゃねーか」

「三馬鹿って呼ぶな!」


陽気な人達だった。


「いょっしゃ、グランドワーム討伐記念だ。今日は山ほど食うぞ」

「おチビちゃん、これあげる」

「あ、これも旨いぞ」

「これも」

「これも」

「これも」

「馬鹿。そんなに食える訳ないだろ。それにルーク。自分が嫌いなもんをガキに押しつけるな。自分で食え」


凄く強くて頼もしかった。きっとどんな敵を相手にしても負けないのだと思っていた。


「瘴気の排除かどうする?」

「あー、まあ金にはならんがこれも助け合いだ。受けてもいいんじゃないか?」


とくになんてことない仕事のはずだった。


「やべえな、厄災だ」

「アンラッキーにも程があるわね」


その不運は自分が運んできたのかもしれない。


「くっ・・・」

「ダリア!」

「おチビちゃん! ポーション出して!」

「大丈夫、息はある。とはいえ4本目か。ダリアはもう無理だな。ちびすけ、ダリアを頼む」


泣きながら意識のない彼女を亜空間ボックスに入れた。


ヴオオオオオオオオオオオン。


「うお、あの三馬鹿どもやりやがった!」

「それはいいが目の前のこいつらはどうする?」

「このままだと近くの街を襲うよね」


みんな亜空間ボックスに避難してほしかった。でも誰もそうしなかった。


「ちびすけ。 ダリアを頼むな」

「また、後でな」

「これが終わったら、スペシャルアイス奢ってあげる」


それが最後に交わした言葉になった。街を守った三人もコアを破壊した三人も一人残らず帰らぬ人になった。


「お前みたいな厄病神に関わったからこんなことになったんだ!」


その通りだと今でも思ってる。




住宅地から少し離れた一軒家、ここが女将さんから聞いた彼女の家だ。

家にいてくれることを祈りながら呼び鈴を鳴らした。

程なくして彼女は現れた。

フルルを見て驚きの表情を浮かべている。

そんな彼女に、


「ダリアさん。助けてください!」


フルルは力一杯、頭を下げた。





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