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62 メガネの弓使い、その3です。

メガネが空を飛んだ。

俺たちが呆然と見上げていると、メガネは次の行動を開始した。

弓を引いて狙いをつけ矢を放った。

上空から放たれたは、勢いをつけながら進み炎の小人の一人を射抜いた。


「あー、確かに空を飛べば前衛に守られる必要ないし、上からなら射線が通っているから狙いやすいだろうけど・・・どうやって飛んでいるんだ? ウインドナックルってそんな魔法じゃねーだろ?」

「たぶん、あの乗っている板が浮遊石・・・じゃないかな」


浮遊石、とあるエリアから入手できる文字通り浮遊する石なのだが・・・。


「あのサイズで人1人浮かせるのはキツくね? そもそも浮遊石は浮きっぱなしの代物だろう? 下にいた時にはそんな感じなかったぞ?」

「僕に聞かれてもわかんない」

「そーだよな。あとで本人に聞いてみるか。それにしても・・・」


俺は再度、空を見上げながらため息をついた。


「せっかくの飛行少女だってのに一欠片もときめかねーわ。マジで残念だわ」


いや、本当に残念だ。ナウシカとか宅急便とかエウレカとか空飛ぶ少女にはそれだけでロマンがあると思っていたのに現実はがっかりだ。


「? ・・・ええっ?」

「うん? フルルはあの空飛ぶメガネにときめいている? こう、踏まれてもいいからあのフライングボードになりたいなぁとか思ってる?」

「そんなわけないし!」

「だよなぁ」


かつて、キキの箒になれたらいいなぁとか思った事はあるのだが、このメガネ弓使いにはさっぱりそういう気持ちになれない。もし仮にメガネを取ったら凄い美人だったとしても、そんな気持ちは1グラムすら持たないだろう。

残念メガネのせいで夢が壊れたな。なんて考えるヒビキの隣でフルルがいつもより距離を置いて離れていることにヒビキは気がつかなかった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「この浮遊板はですね、ここのスイッチで浮力のオンオフを切り替える事ができてですね、オンにした状態でこの中央な所にウインドナックルを当てるとなんか色々と内部に風がながれて浮く仕組みになっているらしいですよ」


地上に降りてきたアストリア嬢にどうやって飛んでいるのか聞いたら、快く、自慢気に教えてくれた。ありがたいのだが、らしいって何だ?


「いや、貰い物なんで私もイマイチ内部構造とか知らないんですよね」

「誰からそんなヘンテコリンな物貰ったの?」

「グレイスとかいう頭のおかしな人からですねぇ。なんでも、新しい可能性を追求する魔改造博士らしくて色々とやっているそうですよ。このボードも空を飛ぶ弓使いという可能性を追求する為に博士が作ったって言っていました」

「グレイス・・・か。ちょっと興味があるんだけど何処に住んでるの?」

「うーん、風のように現れて嵐のように去っていく人ですからわかりませんねぇ」


そうか・・・ちょっと残念だ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


それから、特に問題もなく弾鋼の採掘場に辿り着いた。いや、ひっきりなしに炎の小人は襲ってくるのだが問題なく返り討ちにした。

採掘場で分身達を採掘班とその護衛に分けると俺たちは例によって例の如く亜空間ボックスに引っ込んだ。

そして、お茶を飲んだり、食事をしたり、ゲームをしてりしながら時折、溜まっていく弾鋼とそれを選別しているメガネ娘を眺めていた。彼女曰く、「自分にふさわしい弓を作る為に原石の状態から厳選する」らしいのだが、正直ヒビキには理解出来ない感覚だ。


「うーん、もう何時間もああやって弾鋼を選別しているけど、そんなに違うものなのかな?」

「装備にこだわる人はもの凄くこだわる。自分の武器を素材の一つ一つを自分の目で確認する人とかいた」

「そんなもんか?」

「隊長の場合は沢山必要だし、実際に武器を振るうのが1号さん達だからピンと来ないと思う」

「そんなもんか」

「うん・・・あとこれで詰み」

「げっ!」


慌てて盤上を確認したら確かに詰んでいた。

これで今日の戦績は1勝6敗である。外の小人どもよりよほど強敵だ。


「うー、もう一度勝負だ」


ヒビキは懲りずに戦いを挑んだ。




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