59 怒れる親方です。
翌日、俺は武器屋『ステラ』を訪れて事情を説明した。
「という訳で親方ー。また40組ぐらい武具を作ってくれー。できれば3日で」
「帰れ!」
ブォンとハンマーが飛んできた。
「うお! 待った! 話せばわかる! 話せばわかるんだ!」
「うるせぇ糞ガキ‼︎ こっちは他にも注文抱えてんだ!おとといきやがれ‼︎」
俺は工房を追い出された。
ほうほうの態で俺は店の方に戻ってきた。
「どうだったヒビキ君?」
ステラさんが事の経過を聞いてきた。
「全然ダメ。取りつくしまもなかった。なんとかしてよステラさん」
「いや、ヒビキ君の大量注文で色々と無理がでてんのよ。その上3日後に同じ量でしょう? そりゃ旦那怒るよ」
「そっかー」
うーん。前世で社蓄が辛かった俺が親方に無理な仕事を振るのもアレだしな。
でも、武具はいる。どうしようか?
再度、俺の分身を助手とする。
それで、親方の負担が多少なりとも軽減されれば俺の武具を作る余裕もできるはずだ。
でもまだ足りないかなぁ・・・。
他の武器屋に頼む方法もあるのだけれど、あまり乗り気になれない。できるならば規格は統一したい。
であるならいっそ・・・。
「とりあえず、俺の分身を何人か置いとくからこき使ってやってよ」
俺はステラさんにそういって武器屋『ステラ』を後にした。
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俺は『ステラ』を後にしたその足でクーヤの元を訪れた。
「やっほー、クーヤ。商売の調子はどうだい?」
「悪くないわね。黄金蜂の蜂蜜漬けが西の方で売れに売れてね、あんた黄金蜂を巣ごと狩ってきてくれないかしら? 高く買うわよ」
「・・・蜂はちょっと・・・苦手かな」
「何よ情けないわね・・・。まあいいわ、それで? 何の用事かしら?」
「実は魔鉱炉が欲しいんだけど、なんとかならないかな?」
「魔鉱炉? できるけど魔鉱炉なんて何に使うの? 冒険者止めて鍛冶屋になるの?」
似たようなやりとりを前にもやったなと思いつつ俺は答えた。
「いやね、7番迷宮のあれから俺、順調に成長してね、いま分身を80人召喚できるようになったんだ」
「80人⁉︎ 8人じゃなくて⁉︎」
「間違いなく80人。正直、俺もびっくりなんだ。それで武器や防具が足りなくなって、鍛冶屋の親方に40人分の武具を頼んだら、そんなに作れるか! って追い返されちゃってさ」
「そりゃ追い返されるわよ」
「まあ、そうだよな。でも武具は必要だからいっそ金属の精製までは自分でやろうかなって思ってさ」
「あんた、金属の精製なんてできるの?」
「鍛冶屋の親方の所に手伝いとして分身を置いて色々手伝っているから精製までは何とかなると思う」
「なるほどね、じゃあ魔鉱炉の手配してあげる。でもお金は大丈夫? 魔鉱炉と必要そうな物一式、それに私の取り分含めて1000万ゼニーくらいかかるんだけど」
「1000か・・・いま、500くらいしかないな。あと3日ほど待ってくれる?」
「・・・むしろ、3日で500万ゼニー作れるの? 割と本気でびっくりなんだけど・・・じゃあこっちも3日で用意するから、3日後に受け渡しといきましょう」
「わかった」
クーヤとの交渉は上手くいった。
あとはお金が必要だ。
ちょっと『貨幣創造』があればなと思ってしまった。
明日はエリアで金策だ。




