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48 子育てに悩む天位の7番です。

 20番ゲートのセカンドエリアに存在する、通称、骨の迷宮を二人の女性がボスの部屋を目指して歩いていた。

 一人は金髪碧眼の少女、タワワ=リンゴレッド。襲い来るスケルトンファイターを、一太刀で切り捨て進んでいる。

 もう一人の栗髪栗目は170センチ近い長身の女性、カテュハ=サワカーラ。この迷宮都市にその名を知らない者などいない天位の7番である。

 といっても、今日の彼女は狩りをする気などない。ただの付き添いである。

 そんな、彼女は最近困っている事があった。

 原因は自身の前を歩く少女の事だ。

 とある理由で奴隷として抱える事になった少女。

 その少女が、不意に口を開いた。


「なんで、ついてきたの?」

「特にこれといって理由はないんだが、しいて言えばタワワの事が心配になったからかな」

「余計な心配」

「それは、今日の狩りで判断するさ」


 そう言うと、タワワはプイっと顔をそらした。そして、スタスタと前に進んでいく。

 カテュハはやれやれと内心で呟いた。反抗期の娘を持つ母親のような心境だった。そして、そんな心境を抱くことに複雑な気分にならざるをえなかった。

 カテュハは25歳の頃に不老の薬を飲み、それ以降、軽く100年以上生きているが外見は25歳の頃のままだ。

 そして内面も20台の頃と変わってはいないと、少なくとも自身は思っていた。

 それが、この娘を奴隷として買い、面倒を見始めてから、どうにも歳をとった様な気がしてならない。私はまだまだ若いんだけど……そういう気分だ。

 その一方でこの少女に少なからず愛情を持っていて、自立できるまではちゃんと面倒みなければならないという使命感(母性とは言いたくない)もある。

  ここでいう自立とは冒険者だけの事に限らない。むしろ、戦い以外の事を学んで欲しいと思っている。少なくともつまらない詐欺に騙されない程度には世間を知って欲しいし、世間と関わって欲しいのだ。

 その為に、主人の立場を利用していくつかルールを設けてある。

 朝食と夕食はできる限り一緒にとる。その時にその日の出来事を話し合う。お金に関してはお小遣い制を導入して、お小遣い帳をつける。休日は外で遊ばせる。

 そんなルールを自分が提案したくせに、私は過保護な母親か⁉︎ などと思ってしまうあたり自分の気持ちに矛盾を抱えている。

 妙なことになったなぁ……というのがカテュハの偽ざる気持ちである。

 そんな、悩めるカテュハが、今回タワワに同行したのは、先ほど言った通り彼女の事が心配だからだ。

 弱いと思っている訳でも、未熟と思っている訳でもない。むしろ実力や才能は、天位の座まで登りつめ、およそ170年を生きてきたカテュハから見ても別格だと言わざるを得ない。

 だが、いかに才能があろうとも、パーティーを組まずソロで行動するのは性急だと思う。できる事ならちゃんとパーティーを組んで欲しいのだが、そんなカテュハの考えを知ってか知らずか、タワワは一人でエリアに入っていく。最近、特にその傾向が強くなってきた。

 この骨の迷宮にしてもそうだ。中級になりたてのパーティーにオススメと言われている。

 パーティーにオススメなんだパーティーに。タワワだってパーティーを組んで行けばいいのに実質ソロで進んでいる。

 それは凄い事ではあるが良い事ではない。そうカテュハは思っている。

 なんとかならないものか。そう思案しているうちにボスの部屋に着いた。


「扉が閉まっている。先客がいるんだ」

「空くまで待つのか?」

「うん」


 短いやり取りの後、その場で扉が開くのを待つ事になった。

 ちょうどいい、少し話してみようか……カテュハはそう思った。

 

 

 


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