38 シーフな女の子、その6です。
慌ただしい準備を終えた翌日、アクアマリンと泉石を手に入れる為に、7番エリアの知恵の迷宮にやってきた。
中は天然の鍾乳洞といった雰囲気で壁は青みがかっている。純度の低いアクアマリンが混じっているからで、売り物になるような純度の高い奴は壁が輝いているらしい。なんともわかりやすい話だ。
俺は街に置いてある二人以外の全員を、知恵の迷宮に解き放った。
「こちら、7番。異常なし」
「こちら、13番。異常なし」
「こちら、19番。ジァイアントワームを発見!繰り返す。ジァイアントワームを……ぎゃああああああっ!」
コピーの一体が命を落としながらも、危険な存在を伝えてきた。俺は迷宮の地図を見ながら指示を出した。
「19番は、だいたいここら辺にいた。3番、9番、20番は気をつけろ!」
「こちら12番、アクアマリンを発見しました」
その報告を待っていた。
俺は無限術を使い、分身を生み出した。
「よし、19番。ピッケルを持って12番の所までいってこい」
「はい。隊長!」
「優先順位はアクアマリン、ピッケル、お前の順だ。もしジァイアントワームに遭遇しても、アクアマリンとピッケルは守りぬけ。壁際に寄せとけばお前ごと食われはしないだろう。後は他の奴が回収する」
俺の価値はピッケル以下ですか⁉︎ などと軽口を叩きながらも、命令には忠実にピッケルを持ちアクアマリンを採掘しに出ていった。
その後も、
「こちら6番、アクアマリンを発見!」
「こちら1番、アクアマリンを発見! ピッケルは所持しているので採掘に入ります!」
「こちら15番、大量のアクアマリンを発見! 壁が輝いて見えます!」
続々とアクアマリン発見の報告が届いた。
「よし、6番と15番の所にピッケルを送る。15番の所に2番と17番も向かえ。1番はグランドワームが近くにいるから気をつけろ」
そうやりとりしていると19番がアクアマリンを持って俺たちの所まで戻ってきた。ちなみに俺たちは迷宮中央の近くの小道に亜空間ボックスを設置している。
ジァイアントワームが入って来れない安全地帯だ。
19番はアクアマリンをゲートの上に置くと、更なるアクアマリンを求めて走り出した。
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「うわ〜〜〜〜〜」
積まれたアクアマリンを見てクーヤが喜びの声を上げた。目が輝いている。
「凄い」
たわわちゃんも短いながら驚いていた。
「いや、大量大量」
俺も満足していた。というより、ジァイアントワームを避けてアクアマリンを掘る作業は、思いの外楽しかった。
この無限術師の強みをフルに使えている感覚。癖になりそうだ。
「あんた、これだけやっていれば遊んで暮らせるんじゃないの?」
確かにな! 俺もそう思う! でもそれは駄目だ!
「俺はもっと上に行きたいんだよ」
俺の簡潔な答えにクーヤは首をかしげ、たわわちゃんは短く頷いた。
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あれから数時間、アクアマリンを掘って掘って掘りまくった俺は、もう十分だと判断して迷宮の奥に向かった。途中、ジャイアントワームが暴れる音がこっちまで響いてくることもあったけど、結局俺とフルルは影も形も見ずに迷宮のボスの部屋までたどり着いた。
「ここからは私の仕事」
たわわちゃんは短く言った。
「一応、遠くから見守らせてくれ」
「必要ない」
「……ライバルの実力をこの目で……分身達の目でみておきたいんだ」
「……なら、かまわない」
そう言うと、椅子から立ち上がり、剣を腰のベルトに挿した。
「あ、あの、危なくなったらここに戻ってきてください」
そうフルルが心配し、
「頑張って下さい! 私の未来の為に!」
そうクーヤは激励した。
うん、ほんとクーヤはぶれない。
たわわちゃんはそんな二人に少しだけ微笑むと、颯爽と亜空間ボックスから出ていった。




