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35 シーフな女の子、その3です。

 翌朝、俺とフルルはクーヤと合流してエリアに向かった。

 結局彼女をパーティーに加える事にした。というより押し切られた。

 なんせ、食事中ずっと土下座しつつワンワン唸っているんだもん。暇な時間といっても全く人がいない訳でもなかった。周囲の目が痛かった。

 根負けした俺はとりあえず入団テストをする事にした。彼女はレベル2だそうだからゴブリンあたりが妥当だろうと荒野のエリアにやってきた。

 そして、彼女の戦い方を見て何故彼女がパーティーを組めないのか理解した。

 

「なあクーヤ」

「なに?」

「冒険者止めた方がいいよ。絶対に向いてない」

「はあ? 私のどこが悪いってのよ!」


 俺の忠告に噛み付いてくるクーヤ。ちなみに敬語で低姿勢だったのはパーティーを組むまでで、組んでからはこの調子だ。現金すぎる奴だと思う。

 まあ、口調にかんしては別に構いはしないが戦闘に関しては問題ありとしか言えない。


「悪いもなにも戦ってすらいねえじゃねえか」


 そう、このクーヤ、俺の分身の陰に隠れて戦わないのだ。そりゃそんな奴いらないって言われるだろう。

 なのに、


「全く、これだから素人は。いい?シーフって職業は戦い以外で役に立つ職業であって、むしろ戦いでは後方支援がメインなのよ」


 そんな事を堂々と言ってくる。

 一応、間違った事を言っている訳じゃない。シーフは多種多様なスキルを取得する。気配察知、魔力察知、聞き耳、嗅覚、千里眼、俊足、忍び足、その他色々。

 それらを駆使して、敵の位置を把握したり、目標を見つけたりする、いわばパーティーの目の役割を果たす事がシーフの役目だ。一方、戦闘となると、戦士や騎士に比べ闘気が少ないシーフは前衛を張れない、かといって攻撃魔術を覚える訳でもないので後衛も務まらない。ハッキリと言えばシーフの戦闘における第一の役割は味方の邪魔にならない事だ。

 いなくても問題ないが、いれば便利で儲かる。それがシーフという職業だ。

 だから、クーヤの言っている事は間違っている訳じゃない。間違っている訳じゃないのだが、職業レベルを上げるにはモンスターと戦わなければならない。正面から戦わず味方の邪魔にならず、その上で多種多様なスキルを活かして敵を翻弄する。そういった立ち回りが要求される難しい職業だと言える。

 そしてこのクーヤという少女は、そこら辺まるで駄目だった。


「御託はいいから戦ってレベルを上げろ、レベル2のシーフとか俺たちには必要ないんだよ」


 そう必要ない。レベルが10を越えて中級を目指している俺にはレベル2のシーフは必要ないのだ。

 それでも、将来的に成長しそうなら手を貸す事もできるんだが……。

 ……。

 ……。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「きゃあああ!」


 ゴブリンに突き飛ばされたクーヤが悲鳴をあげた。

 ゴブリンは転がったクーヤに止めを刺そうとするが、間一髪俺の分身が間に入って盾になる。

 そして更に二人、竹槍で突撃してゴブリンを倒した。

 その後、起こしたクーヤと亜空間ボックスに入りテーブルを囲んだ。

 作戦会議だ。……というより説得だ。


「とりあえず、三回ゴブリンと戦った訳だが……三回死ぬところだったな」

「うっ……助け合うのがパーティーってもんでしょう?」

「助け合いになってねーよ。お前、全然周りが見えてねーだろ」


 この小生意気なクーヤちゃんは、戦闘になるとテンパって目の前しか見えなくなる。仲間と協力して戦う冒険者としては致命的だ。


「…………私には冒険者は無理だと思う?」

「思う」


 悲しげな表情で聞いてくるクーヤに俺は即答した。残酷かもしれないが、でもここで「そんな事ないよ」とは到底言えなかった。


「そっか……薄々、そうじゃないかって自分でも思っていたわ」


 そう言って脱力して、


「うん。私、冒険者引退するわ」

「そうだな、たぶんそれが一番いいと……」

「だから、私と一緒に7番エリアの知恵の迷宮をクリアして頂戴」

「はい?」


 唐突な提案に変な声がでた。


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― 新着の感想 ―
[一言] ここまで」大変面白かったのですが、シーフの参入は、失敗だと思います。 一気に面白くなくなり、これ以上拝見する気がなくなりました。 残念です。
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