表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/137

21 唐突なプロポーズです。

「た、たわわちゃん⁉︎」


 思わず声を上げてしまった。

 そんな慌てる俺とは対象的に。たわわちゃんは冷静で用件のみを告げてきた。


「貴方に用事があるの。それが済むまで前の時みたいに、いなくならないで」


 用事! たわわちゃんが俺に用事だと! 一体何の用だ⁉︎

 正直何の用事だか見当もつかなかった。

 もしかしてもしかしてデートのお誘いだとか?

 そんな事を考えてどぎまぎしてしまう。

 いや、冷静に考えてそんな展開は、まずありえないと思っているよ。だけどたわわちゃんがわざわざ俺に会いにくるとか、冷静さを吹き飛ばす一大事件なのですよ。

 心臓をどぎまぎさせながらたわわちゃんの用件を待った。

 

「私は一つ貴方に謝らなければならない事があるの」

「謝らなければならない事?」


 なんだろう? 正直身に覚えがない。


「最初に出会ったとき、貴方を弱いもの呼ばわりしたでしょう。私は貴方を無限術師という一点でそう判断した。でも、違った。貴方は上を目指して努力していた。天位の座を得るとはっきり宣言した。私は私以外に天位の座に至ると宣言した人間を貴方しか知らない。そんな貴方を弱いと見なしたのは間違いだった。ごめんなさい」

「…………」


 予想もしなかった言葉に混乱しながらも、なんとか彼女の話を理解しようとした。

 確かにたわわちゃんは俺の事を弱いと言った。そんな弱い奴に仕えたくないと。

 正直いい気はしなかったな……でも、彼女が特別偏見を持っていた訳じゃない。しいて言えばそれが無限術師に対する一般的な評価だ。

 だけど、そんな世間の評価に反して、天位の座を目指している俺を認めてくれて、今謝ってくれていると……。

 ……。

 ……。

 天使かこの娘!

 やばい! この世界では、神様が普通に歩いているらしいが天使までいたよ! 可愛くて、腕もたって、更に優しさと素直さが同居しているとか反則だろこれ!


「ああ……それね……それは……あれで」


 やっべえ。ありがとうって言いたいのに言葉にならねえよ。テンパりすぎてまともに喋れない。普通でいいんだ普通で……。いや違うか、俺は普通の言葉じゃなくて、気の利いたかっこいい言葉を返したいんだ。爽やかでクールな言葉で。

 かっこいい返事。

 かっこいい返事。

 かっこいい返事。

 ……やっべえ出てこない!


「たわわちゃん」


 いつまでも黙っているのもかっこ悪いから、とりあえず名前を呼んだけど続きが出てこない。何か、何かないのか、なんだっていいから何か!

 そうやってテンパりまくった俺は、後ほど布団の中で転がりまくる事になる阿保なセリフを言った。


「俺が9番目の天位になったら結婚して下さいいいい⁉︎ 何を言ってんだ俺はああああ!」

「えっ?」


 たわわちゃんは一瞬キョトンとした表情をした。

 次の瞬間、俺の言葉を理解して、顔を赤らめながらも睨みつけられた。


「何を言っているのあなたは⁉︎」

「だよなぁ、何を言っているのだろうな俺は?」


 思わずたわわちゃんに同意しちゃった。

 じゃなくて、


「ごめん、せめて言い訳ぐらい聞いてください」

「……わかった」


 とりあえず話は聞いてくれるみたいだ。


「いやね、俺が無限術師になってから周りから結構な扱いされたんだ。馬鹿にされるし、誰もパーティー組んでくれないし、天位の座を目指しているなんて言おうものなら嘲笑われるしさ…ふはははそこらへんわかる?」

「……なんとなく想像出来る」

「なんとなくで十分さ。で、そんな中で俺が天位の座を目指している事を、まともに受け取ってくれたのはたわわちゃんだけなんだよ。正直、すごい嬉しかったです」

「…………そう」


 たわわちゃんは短く呟くと顔をそらした。

 たぶん、照れくさいんだと思う。俺だって照れくさい。


「それに加えてたわわちゃんは可愛らしいし、可憐だし、その上天使だしで、これはもう俺がとち狂ってプロポーズの一つや二つしたって仕方ないと思うんだ」

「仕方なくはないし私は人間」


 顔をそらしながら呟くたわわちゃん。そこに普段のクールなたわわちゃんはいない。あきらかに動揺している。もしかして、この唐突なプロポーズを好意的に受け取っているのだろうか?


「それで……どうなんだろう?」

「どうって?」

「いや、俺のお嫁さんになるのはどうなのかなって……いきなりすぎるなら恋人から始めても……」

「それはない!」


 俺の儚い望みはいい終える間もなくバッサリと断ち切られた。さっきまで照れていたのに一瞬でクールたわわちゃんに早変わりだった。

 くそう! 現実は甘くないぜ!

 俺はテーブルに突っ伏した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  ぐはっ!断られてしまった。
[良い点] 駆け出しの頃の強くなっていく過程が何度読んでも好きです。それと、三傑の書籍化おめでとうございます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ