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17 王に挑む者達、その6です。

 俺の、打倒ゴブリンキング大作戦を聞いたエルト君とメアリちゃんは、微妙な表情をした。

 まあ変な作戦だかな。

 そして話し合いの結果、俺の作戦を実行に移すことになった。

 今は作戦実行の準備を各々進めている。メアリちゃんは部屋の隅に置いてあった毛布をかぶり睡眠をとっている。すこしでも魔力を回復する為だ。そして男3人は部屋の逆側の竹置き場で、せっせせっせと竹槍を作っていた。

 キングゴブリンを相手にする為じゃなく、ゴブリンを倒す為にだ。作戦を実行に移すには、俺の分身が6人必要だからだ。俺のレベルをもう一つ上げる必要がある。

 もちろん部屋の外では、分身達がかれこれ数時間ゴブリンを狩りまくっている。

 しかも、5人の分身の内二人は遠征させて、ゴブリンを引き連れてくるよう動かしている。さっきやられたモンスタートレインだ。

 そんな事をやっていれば当然消耗も激しい。戦力が分散しているからな。魔力が80を切った。累計で60人の分身を生み出したことになる。竹槍も作ったそばからなくなっている。


「しかし、迷宮にきて竹細工とはね、今朝の僕はこんな事になるとは想像もしなかったよ」

「俺もゴブリンキングに挑むとか思いもしなかったよ」

「悪いね、本当に」

「まったくだ。何なら今から中止しても構わないぜ?」

「ありがたい忠告なんだけれど……すまないね」

「馬鹿だよな? お宅ら」


 そして、その馬鹿に付き合う俺らも馬鹿だ。

 にしても、


「レベルがあがらねぇな……」


 かなりのハイペースでゴブリンを倒し続けているが、未だにレベルが上がらない。まあ1日で2つレベルを上げる方が異常なんだし、レベルが上がるほど次のレベルアップに必要な経験は増えていくから、おかしくはない。

 ただ、もどかしいだけだ。

 とりあえず、ひたすらにゴブリンを狩る。今のところできるのはそれだけだ。

 ……。

 ……。

 ……。

 あれからゴブリンを狩り続けて数時間、やっとレベルが上がった。

 

 ステータス

 ヒビキ=ルマトール

 無限術士Level6

 闘気 0

 魔力 48/150

 スキル 分身召喚(最大召喚数 6)


 よし! 計算通り分身が6人に増えた。早速、ゴブリンキングに挑む事にした。

 フルルと外に出てボスの部屋の手前まで移動する。さすがに6人も分身がいると余裕があり、問題なく行けた。

 問題はこれからだ。俺は二人を呼び出した。これで計10人と結構な大所帯だ。


「じゃあ、これからゴブリンキングに挑むか。野郎ども準備しろ!」

「「「ヒヒーン!」」」


 分身達は馬の鳴き真似をしながら、3人一組でガシッと隊形を組んだ。そう、運動会の騎馬戦でおなじみのあの隊形だ。


「さあ、乗ってくれ」


 俺はエルトとメアリちゃんにそう言った。

 二人は引きつった笑みを浮かべていた。


「本当にこれで行くのかい?」

「もちろん。その為にレベル上げたんだから」


 これが俺が考えたゴブリンキング討伐作戦、足を怪我しているなら、俺たちが馬になればいい作戦だ。


「だよね……」


 二人は観念したように分身達に乗った。

 そして、分身達は二人を乗せてから立ち上がった。

 

「よし、じゃあ本番まえにちょっと動いてみろ」

「「「ヒヒーン!」」」


 馬になりきった分身どもは、二人を乗せたまま俺とフルルの周りを回った。

 うん、同一個体なだけあって息がぴったりだ。


「どうだ?」


 俺は二人に尋ねた。


「いや〜、確かに足代わりになってくれるのは助かるんだけどさ……」

「なんていうか、このまま戦うのは、人として恥ずかしいです」


 ほう? 人が折角助けてやろうと頑張ってるのに、人として恥ずかしいときたか。ちょっと分身達よ、少しこらしめてやりなさい。


「「「わっしょい! わっしょい! わっしょい!」」」


 まるで神輿の様に上下に揺さられたメアリちゃんは、悲鳴を上げた。


「きゃーーーーー!」

「誰の為にこんなことやっているか考えてみようか、わっしょい!」

「何ならこのまま街まで帰ってもいいんだぜ、わっしょい!」

「通りすがりの優しい冒険者をやめて容赦なく分け前を要求することもできるんだぜ、わっしょい!」

「すいません! すいません! すいません!」


  メアリちゃんは涙目で謝った。


「さて、こんなことやってる場合じゃねえな。のろのろしてゴブリンに来られても困る」


  なんせ、俺の全戦力をそちらに振り分けているんだ。


「フルル」

「うん」


 フルルはゲートを開いた。

 亜空間ボックス内に入る前に、


「じゃあ、死ぬなよ」

「あの……頑張って下さい」


 俺たちはそう言い、


「ありがとうございます。その……ちゃんと感謝はしているんです」

「ありがとう、後でちゃんとお礼するよ」


 彼らはそう返した。

 


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