表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/137

14 王に挑む者たち、その3です

「てりゃ!」

「はぁ!」

「ゴブリンよ、終わりを迎えるがよい!」

「竹の一撃!」

「竹槍三段突き!」


 全部俺のコピーの言葉である。迷宮に入ってから数時間、順調にゴブリンを狩ってきた。

 分身が二人だった時は何度も全滅を繰り返したのだが、それもなくなった。


「たー!」


 今もコピーの一人がゴブリンを倒した。

 が、倒したあと竹槍が胴体にめり込み抜けなくなった。それを好機と見た他のゴブリンが襲いかかる。


「グキッキ!」


 だが、それを阻む者達がいた。


「はっ!」


 一人が竹槍を振り回してゴブリンを牽制し、更にもう一人がゴブリンを狙う。

 程なくしてゴブリンが倒れた。


「油断するなよルーキー、死は常に隣にあると思え」

「はい、センパイ!」


 5番目のコピーはそう返事して、更に尋ねた。


「どうやったらセンパイの様に戦えますか?」

「……そうだな、あと100回死線を超えてみせろ。そうすれば自ずと進むべき道が見えてくるはずだ」

「はい、わかりました!」


 5番目は顔を輝かせた。

 そんなルーキーに苦笑しながら言う。


「……次のゴブリンが来ている。死線を越えにいくぞ」

「はい、たぁああ!」


 二人はゴブリン達に向けて駆け出した。

 ……。

 ……。

 自作自演とか言わないでほしい。コピーはそれぞれ

 独立しているのだ。

 そして、同じ人格でも立場の違いで接し方が変わるのは普通のことなんですよ。

 平社員が昇格したとたんに横柄になるのはよくある事だろう?

 兎にも角にも彼らは順調に成果を上げていた。

 そんな時だ、


「うわぁあああああ!」

「ああああああああ!」


 悲鳴が聞こえてきた。しかも、その声は近づいてきた。

 どう考えてもゴブリンの声じゃない。警戒していると二人の人影が見えた。

 迷宮まで一緒にきた戦士と治癒師だ。

 あっちもコピー達に気が付いた。

 お互いの視線が絡み合った。

 そして、奴らは「どうした?」というこちらの問いかけには応えず、コピー達の脇を駆け抜けていった。

 そして、奴らのあとにゴブリンの大群がやってきた。なすりつけられたのだと気が付いた時には、後の祭りだった。


「センパイ! こんな時どうすれば」

「ふっ……あきらめろ」

「そんなぁああああ!」


 程なくして彼らは全滅した。





「あー全滅した……トレインやられるとかネトゲ以来だぜー」

「ネトゲ?」

「いや、なんでもない」


 亜空間ボックス内で分身達の全滅を知った俺はそんな感じだった。

 さすがになすりつけられた事にはイラっときたが、まあ分身達は死ぬのもお仕事だ。

 それよりだ……。


「うーむ……」

「どうしたんですか?」


 フルルが尋ねてくる。


「いやな、今朝のパーティーの、戦士と治癒師にゴブリンの大群をなすりつけらてな、分身達が全滅しちゃった」

「ええっ! なんでそんな事を⁉︎」

「まあ、悪気があったというより、生き延びるのに必死って感じだったかな。そもそも騎士と魔術師がいなかったからな……」

「それって……」

「まあ、どう考えてもキングを狩りましたって感じじゃねえな。いかにも逃げだしましたって感じだったから」

「…………」


 まあ、そうなるかも? という気はしていた。だから柄にもなく忠告したんだしな。

 治癒師の女の子はキングゴブリンなんかいかにも楽勝です。みたいな事を言っていたけど、この荒野のゴブリン迷宮は、むしろ次から次と現れるゴブリン達の方が危険だ。

 そして、あいつらの戦いを見た時にすげぇとは思ったが、それはあくまで闘気を持たず攻撃魔法が使えない無限術師と比べての話。

 そこまで詳しくはないが、というよりぼっちだった俺は全然詳しくないが、それでもあいつらが他のパーティーに比べ特別優れている気はしない。

 推奨レベルより高い場所で、楽々と無双出来るとは思っていなかった。

 

「あの人達はどうなるんでしょう?」

「あー、そうだな……とりあえず治癒師と戦士は生き延びるだろ……。俺の可愛い分身達を囮にして、出口まで逃げ切れたと思うし、荒野のエリアはそこまで敵が多くないし、多分街まで帰れるんじゃねえかな」


 その言葉にフルルは安堵した様子だ。ほとんど話してもいない奴らなのに優しい奴だ。

 そういう俺だって、ボロクソ言われてゴブリンをなすりつけられて、それでも死ねとまでは思っていない。いかんなぁ、俺達は優しすぎるのかもしれない。冒険者ってのはクールさも必要なのに……。


「騎士と魔術師の二人はどうなんでしょう?」

「あー、そっちは死んだか……。これから死ぬんじゃないかな?」


 俺は歯切れが悪かったものの正直に言った。

 フルルが顔を青くしたがしょうがない。

 すでに一人、もしくは二人とも死んでいる可能性は少なくないし、仮に生き延びていたとしても戦力半減だ。先は暗いだろう。


「あの……その……助けに行ったりとかは……?」


 まったく……お人好しめ。

 そして、即座に却下しない俺も大概だ。

 ふう……。

 ため息をつきながらフルルに聞く。


「もう、手遅れかもしれないぞ?」

「……まだ、間に合うかもしれないんですよね?」

「移動中は外に出るから、危険が増すよ?」

「危なくなったら直ぐにここに逃げ込みます」


 フルルは顔を青くしながらも、強い眼差しを向けてくる。

 しょうがないと俺は折れた。


 召喚魔法を使用する。

 5人の分身が現れた。

 これまでのゴブリン狩りで、俺のレベルは5になっていた。


「注目!」


 俺は注目を集めた。


「これから、俺達軍勢は救助任務に入る。とりあえず迷宮の奥の方までいくぞ。ただし、ボスの部屋には近寄らない。あくまで手前までだ。1号から3号は先行してゴブリンを倒せ。4と5号は俺達の背後を警戒してくれ……じゃあ副隊長、何か一言よろしく」

「えっ? ……えっええ⁉︎ えと……あの……が、頑張りましょう!」


 それはちょっとオロオロしていたが、分身達はげんきにオー‼︎ と竹槍を掲げた。


 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ