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12 王に挑む者達です。

「さあ! 今日もゴブリンを狩りに行こうか!」

「う、うん」


 あれから1夜明け、妙にテンション高くなった俺と、それに若干戸惑うフルルは仮屋を後にした。

 昨日は誰もいない所を目指して走り回り、結果疲労のあまり、倒れる様に寝た。

 そして目が覚めたら名案が浮かんだ。

 そうダンジョンなら人がいないじゃん!

 と、いう訳で俺はダンジョンを目指すのだ。

 我ながら頭の悪い理屈だと理解はしているが仕方がない。働いて忘れたいんだよ!

 前回の狩りで必要だと思ったもの、箒に塵取り、ゴミ箱を買い、食料と水を用意して街から荒野のエリアのゲートを潜り抜けた。

 と、そこで同じタイミングでゲートを潜り抜けたパーティーがいた。

 おそらく戦士、騎士、魔術師、治癒師。バランスのとれたメンツだ。

 しかも、進む方向が同じだ。

 そりゃ不人気エリアだからって俺たち以外人がいない訳じないけど、今日は他人とあんまり関わりたくないのにな……などと思っていると、


「君達もゴブリンキングを倒しに行くのかい?」


 騎士の奴が話しかけてきた。そしてやっぱり目的地は一緒だった。

 

「……いや、俺たちは迷宮の手前の方で、ゴブリン狩りでレベル上げだ。キングを狩れる実力はないよ」


  無意味な虚勢は自分の首を絞めるだけなので、正直に話した。


「ぷぷっ!」

「失礼だよ! サリアちゃん!」


 あきらかに見下してきたのが治癒師の女の子、慌てて止めたのが魔術師の女の子だ。

 

「だって、単なるレベル上げだったら他にもっといいとこあるじゃん。わざわざこんな不人気エリアでレベル上げとか、いかにもパーティー組めませんって感じでしょ?」


 確かにその通り、言っている事は間違っちゃいない。が、だからと言って正直に伝えるのはどうかと思う。

 お宅だって胸ちっちゃいね、とか言われたくないだろ? まあ、俺は言わないけどさ……。

 ペコペコと頭を下げてくる魔術師の女の子に気にしなくていいよと伝えると、四人組から若干距離を置いた。

 フルルを見るとフルルもまた関わりたくなさそうだった。分かるよ。どう考えても面倒くさそうだもんなあの治癒師。

 そこから特に会話もなく歩いていると、ゴブリンが2匹やってきた。

 あっちのパーティーのリーダーであろう騎士がどうすると聞いてきたので、俺たちが行くと伝えた。

 正直あまり愉快な事にならないと思うのだが、敵が来ているのに分身を出さない訳にもいかない。仮にあっちのパーティーに任せるにしても備えは必要だ。

 スタート。

 4人の分身が現れた。


「フルル、竹槍出してくれ」

「うん」


 空中に5重の印が浮かび上がると、その中から竹槍が落ちてきた。分身達は竹槍を掴むとゴブリン達に突撃する。4対2だ。亜空間ボックスに避難する必要もない。

 人数で勝り、リーチで勝っている。勝負はあっけなくついた。

 そして、


「あっはははは!」


 予想通りといえば予想通り、治癒師の女が大笑いしていた。隣の子が必死に止めようとしているけど全然止まらない。ちなみに戦士も笑ってる、騎士は我慢しきれず半笑いだ。まあ我慢しようとする所は評価するけどね。


「だって、あいつ無限術師だよ⁉︎ 初めて出会ったんだけど⁉︎ そりゃ奴隷としかパーティー組めないわ! ぷぷぷ!」

「駄目だったらサリアちゃん!」

「しかも、竹槍よ竹槍! 武器を買うお金すらないのかしら? 貧乏パーティーとか悲惨よねー」

「サリアちゃん! 頑張っている人を馬鹿にするのはよくないよ!」

「はいはい。まったくメアリは良い子ちゃんなんだから。でも、あんな奴にあんまり優しくしない方がいいよ。あの子は俺に気があるとか勘違いしちゃって、周囲をつきまとうストーカーになっちゃたら困るでしょ?」


 さすがにふざけるな! と、言ってやりたかったのだが、つい先日、俺とたわわちゃんはラブラブだったという、盛大な勘違いをしてしまっただけに何も言えなかった。

 結局、騎士が止めに入り終結したのだが、なんとも言えない嫌なわだかまりが残っていて、ゴブリン迷宮までこの調子かと思うとうんざりした。

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