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おかえり


「リヒトさん、おかえりなさいなの」


「ただいまー」


「リヒトさんの部屋は片付けておいたなの」


「え? あ、ありがとう……」


 リヒトがディストピアの部屋に戻って来ると、そこには妙におしゃれをしているフェイリスが立っていた。

 部屋は綺麗に掃除されており、ホコリ一つ残っていない。


 リヒトの部屋を掃除するくらいなら、自分の部屋を掃除した方が良いのではないか――というセリフは、口に出さず留めておく。


「休暇はどうだったなの? 楽しめたなの?」


「うん、楽しかったよ。ロゼのお父さんとお母さんとも話せたし、美味しいものも食べられたし」


「それなら良かったなの。ディストピアは平和だったから、特に困らなかったなの」


 二人は綺麗になった椅子に腰掛けながら、お互いの状況を確認し合う。


「そうか……いや。平和だったんなら、それに越したことはないんだけど……」


 フェイリスの話を聞いて、少し複雑な表情をするリヒト。

 どうやら、ディストピアには敵が攻めてこなかったらしい。


 その平和なディストピアと比べると、吸血鬼狩りと戦うことになったリヒトたちの方が負担は大きかった。

 どちらが休暇を貰ったのか、分からないほどである。


「そういえば、魔王様がリヒトさんのことを探してたなの。仕方がないから、私も一緒に謝ってあげるなの」


「いやいや、何で俺が悪いことをした前提なんだよ。というか、アリアが探してるなら早く行かないと。遅れたら怒られるかもしれないし」


「だから、私も謝ってあげるなの」


「なるほど――って、そんなこと言ってる場合じゃない!」


 リヒトは使い終わった荷物を床に置いて、フェイリスと共に部屋を出る。

 アリアがリヒトのことを探していたのは、どれくらい前の出来事なのだろうか。

 それの時間に比例して、アリアの機嫌は少しずつ悪くなっているはずだ。


 急いでリヒトは部屋の外へと出た。


「魔王様はあまり怒ってる雰囲気じゃなかったから、そんなに気張らなくてもいいと思うなの」


「そうか……ありがとう。何だか、今日のフェイリスは少し優しいな。何かいい事があったのか?」


「……?」


 きょとんとした顔をするフェイリス。

 リヒトとしては、特に変なことを言ったつもりはないのだが、このような反応をされると、自分の感覚がズレているのではと不安になってしまう。


 知らず知らずのうちに、セクハラまがいの発言をすることだけは絶対に避けたかった。


「いい事も何も、リヒトさんが――」


「あ! 見つけたのじゃ!」


 フェイリスが答え切る前に。

 アリアが嬉しそうな声を上げて、奥の方から近付いてくる。


 フェイリスの言う通り、アリアに怒っているような様子はなく、むしろご機嫌とさえ思えた。

 とりあえずリヒトは、その事実にホッと息をつく。


「久しぶりじゃのお、リヒト。休暇は楽しかったか?」


「まあ、それなりに楽しめたよ。あんまり休みって感じはしなかったけどな」


 ふてくされた顔で質問に答えるリヒト。

 今は、休暇という単語が全て嫌味に聞こえてしまった。


 アリアの髪に寝癖がピンとはねているところを見ると、昼までぐっすり眠っていたと予想できる。

 緊張で寝不足気味だったリヒトとは大違いだ。


「うん? ぜひ土産話を聞いておきたいのお――と言いたいところじゃが、もう少し後になりそうじゃ」


「そうだ、俺に何か用があるのか?」


「実はベルン――あの狐娘の報告の中に気になるものがあっての。お主に調査してきてもらいたいのじゃ」


「……」


 リヒトは休む暇もなく。

 次の仕事へと駆り出されることになった。



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