吸血鬼狩り
「アルフ……本当に良かったのか? やっぱり危険だと思うぞ……」
「あんな馬鹿げた報酬を見せられて引けるかよ。この仕事さえ終わっちまえば、後は遊んで暮らすだけだぜ?」
「ヴェート、ここまで来て逃げるの? 情けないわね」
吸血鬼城の前で身を隠す三人。
彼らの一歩を、その巨大過ぎる風貌が妨げていた。
ヴァンパイアに慣れてしまった彼らでさえ、怖気づいてしまうほどの雰囲気だ。
「チッ、写真で見たのとは大違いじゃないか……アルフがもう少し確認してたら良かったのに」
「おいおい、ヴェート。いい加減にしとけよ」
「別に城が大きいだけじゃないの。今回はちょっと大きすぎかもだけどさ……」
やさぐれたように愚痴をこぼすヴェート。
ヴァンパイアが城を持つということ自体が珍しいことではない。
しかし、その大きさがあまりにも規格外だった。
金に釣られてしまった自分の浅はかさを、もう既に後悔し始めている。
「どうせなら成功した時のことを考えなさいよ。三人で分けたとしても、一生遊べるだけのお金が手に入るのよ?」
「そうだぜ、ヴェート。俺たちの中で一番強いのがお前なんだ。つまり、お前が諦めちまったんじゃ、勝てるものも勝てないんだよ」
「そうか……そうだな。アルフもレーネもすまなかった」
アルフとレーネは、ヴェートの改心にホッと息を撫で下ろした。
ヴェートの実力を二人はよく知っている。
吸血鬼狩りとしての能力は、明らかにこの二人よりも格上だ。
ネガティブな思考回路のせいで、戦わずに終わってしまうことが多々あるが、それを加味してもこのチームのエースであった。
「言っとくが、今回ばかりは失敗できねえぞ。もし成功したら、お前はもう二度と戦わなくてもいいんだ」
「……なるほど、そういう考え方もできるな」
「良かった。やる気になってくれたみたいね」
アルフの言葉が決め手となり、ヴェートは迷うことなく立ち上がる。
戦うということは、少なくとも自分の命が危険にさらされるということ。
溢れる才能のため無理やり戦わされていたヴェートだったが、その行為をしなくても良くなると考えると自然に力が湧いてきた。
「それじゃあ、最初の作戦通りでいいな?」
「三方向から攻める――だったわよね?」
「ああ。今ある情報だと、ここにいるヴァンパイアは二匹だ。挟み撃ちにでもしてしまえば、普通に勝てるだろう」
アルフの作戦に反発する者は誰もいない。
いつもなら文句を言っているはずのヴェートも、今回は静かに頷いている。
これまでの経験上、ヴァンパイアが城を捨てて逃げるということは有り得ないため、引き分けという結果は存在せず、どうやっても決着がつく。
三人は、冷静に呼吸を整えた。
「この城に二人って贅沢過ぎるわね。まったく羨ましい限りだわ」
「流石に二人だけではないだろ。下僕たちを多く飼ってるんじゃないか?」
「下僕を飼ってるってことは、そいつらも退治しないといけないってこと? 気が遠くなりそうなんだけど……」
「いや、あくまで俺たちの敵はヴァンパイアだ。主人を失えば紛い物はいなくなるさ」
そのアルフの言葉を最後に。
三人の吸血鬼狩りは、バラバラに散らばることになる。
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