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アプローチ


「国王様、エルフの国から返事は来ていないようです。良い返答は期待できないでしょう……」


「そうですか。やはり人間以外は信用できませんな。不本意ですが、ラトタ国に協力を求めましょう」


「ラ、ラトタ国でございますか!?」


 部下の男から出てきたのは驚きの声だった。

 ラトタ国は、この国の隣国として位置している国であるものの、交流はほとんどない。

 冒険者の育成に重きを置いているという噂を聞いたことがあるが、それすらも真偽は不明だ。


「ラトタ国と交流を深めるいいチャンスです。あっちからしても、正体不明のダンジョンは無視できないでしょうから」


「な、なるほど。流石国王様ですね」


 部下は納得するように国王を褒め讃える。

 ラトタ国と交流を深めると共に、ダンジョンの調査まで出来れば、一石二鳥では済まされないほどの利益であった。


 どこまで上手くいくかは分からないが、国王ならついつい期待してしまう。


「とにかく、ラトタ国の王とコンタクトを取らなければいけませんな。どうしましょうか……」


「使者を送れば良いのではないでしょうか……? 国王様」


「それでも良いのですが、ラトタ国はかなり閉鎖的な国なのです。普通の使者では、追い返されてしまうでしょうな」


 ラトタ国に声をかけることは決まったが、問題はコンタクトの取り方だ。

 ラトタ国に関しての情報は限りなく少ない。

 国王の存在すら謎のベールに包まれている。


 その上で、数多くの国がラトタ国との交流に失敗していた。

 使者を送るにしても、普通の使者では相手にしてもらえない可能性の方が高いだろう。


「それなら……ラトタ国は冒険者を重視しているとのことですので、我が国の冒険者を向かわせるのはいかがでしょうか……?」


「冒険者……ですか」


「す、すみません。出過ぎた真似を致しました……」


 部下は己の行動を恥じる。

 国王の前であるにも関わらず、考えもせずに自分の頭の中をさらけ出してしまった。

 ただの側近である自分が、だ。


 見方によれば、処刑されてもおかしくないほど不敬な行為である。


「いや、なかなか面白い考え方かもしれませんぞ。冒険者視点というのは、私たちでは辿り着けないものです。ラトタ国と接するための架け橋になってもおかしくありません」


 しかし。

 国王の反応は、部下の内心と違って好ましいものだった。

 冒険者を使者にするというのは、完全に頭から抜け落ちていた考えらしい。


「それなら、冒険者を選別する必要がありますな。時間はかかってしまうかもしれませんが、仕方ないでしょう」


「い、今すぐ選別を始めます!」


 こうして。

 ラトタ国へのアプローチは始まることになる。



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