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ドーバ


「おいおい! どうなってるんだ!」


 東の魔王軍幹部であるドーバは、その場に立ち尽くすことしかできなかった。

 同じ幹部として最も信頼していたルルカが、無残な姿で息絶えていたからだ。


 どのような手を使われたのかは分からないが、心臓と喉に風穴が開けられている。

 正確に急所を射抜いたその攻撃――数秒として耐えられるものではない。


 ルルカの索敵能力は、この魔王軍でもトップクラスであり、鍛え抜かれた遠距離魔法で何人もの人間を葬ってきた。

 どれだけ敵がいるのか把握できていないのにも関わらず、ここでルルカを失うのはあまりにも痛すぎる。


「すみません、ドーバ様! アタシが来たときにはもう……」


「チッ、もうこの城の中に入られたってことか……? どんな奴かは知らんが、ルルカを狙ったのは大正解だぞ……」


 ドーバは、行き場のない憤りを自分の中に押しとどめた。

 ついつい敵を褒めてしまうほど、絶望的な状況だ。

 下僕のフィーはどうして良いのか分からずに、アワアワとドーバの様子を伺っている。


「ドーバ様……ルルカ様をどうなされますか?」


「放っておけ。片付けるのは後でいい」


「あ、あの! やっぱりアタシ、この殺され方はおかしいと思います!」


「……確かに不自然な殺され方だな」


 異変に気付いたのは、フィーの方が先だった。

 ルルカの殺され方は明らかに常軌を逸している。


 そもそも、この部屋には戦ったような形跡がない。

 いくら強敵だったとしても、抵抗すらできずに死ぬということが有り得るだろうか。

 ましてや、魔王軍の幹部であるルルカが、だ。


「確か、ルルカが敵を殺す時もこのような殺し方だったよな」


「そ、それは、ルルカ様と同じ技術の者が敵にもいるということでしょうか……」


「いや……それにしても、ここまで似ているのか? なにか――」


 その時。

 ガシャン――と、扉を蹴り破るような音が城の中に響き渡る。

 下僕には聞こえていないようだが、ドーバの耳はしっかりと聞き取っていた。


 このタイミングで――なおかつ、このような入り方をするような者の心当たりは一つしかない。


「ここまでか。他の幹部にもルルカのことを伝えてくれ」


「か、かしこまりました!」


 これ以上、ゆっくりと会話をしている暇はなかった。

 侵入者に一番近いドーバが、相手をすることになるだろう。

 フィーに用意させた武器を持ち、足音がする方向へ進む。


 ルルカの仇として。

 侵入してくる者は、一人残らず叩き切るまでだ。

 憎悪に反応して威力が増す【憎剣】は、まさにベストコンディションと言えた。


「一応――必要ないかもしれないが、魔王ガルガ様にも報告しておいてくれ。こっち側の侵入者を倒し終わったあと、すぐ合流する予定だ」


「はい! ご武運を!」


 ドーバの勝利を信じて。

 フィーは、それ以上言うことなく送り出した。



刑事ドラマかな?

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