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売られた喧嘩?


「――へぇ。じゃあ、エルフと竜人とは、もう仲良くなれたんだ」


「そうだよ。特に竜人になんて、不自然なくらい感謝されちゃってさ」


「竜人と仲良くなれるとは、流石のボクでも予想できなかったなー。リヒトが何をしたのか、気になって夜も眠れないよ」


 定期的な死霊確認の最中――ドロシーとリヒトは、他愛のない世間話で盛り上がっていた。


 様々な種族がいるこのディストピアで、人間という共通点から共に行動する機会が多くなっているらしい。

 人間特有の悩みなども共有できる、リヒトにとって親友とも呼べる存在だ。


「でも、最近の魔王様は外の世界に熱心みたいだね。もしかして、世界を支配しようとしてるのかな?」


「……分からないけど、百年前に痛い目を見たらしいから、その教訓が生かされてるのかもな」


 世間話の続きとも言える流れで、ドロシーは最近のアリアを話題に出した。

 エルフや竜人という例があるように、今のアリアは他種族を受け入れる傾向にある。


 どっちにしろ命令に逆らうつもりは無いため、無駄な考察となるのは確実だが、それでも気になってしまうというのが人間の性だ。

 話は少しずつヒートアップしていく。


「百年前……そういえば、そんな話があったね。それについて聞くのはタブーだったっけ?」


「ああ。この前聞こうとしたら、怒って部屋に閉じこもられたよ」


「やっぱり何かあったんだろうね……」


「戦力を増やそうとしているのも、本当にその影響かもしれないな。力で支配するようなことはしていないし」


「うーん……」


 人間二人による何の根拠もない考察は、自分たちでもどこへ向かっているのか分からなくなり始める。

 実際、本人たちも本気で解明しようとしているわけではなく、一つの暇潰しとして楽しんでいるだけだった。


「戦力で考えたら、まだ人間の国には勝てないのかな。総力をぶつけられたら、数の差で押し切られそうだし。まあ、今の人間界のことはあまり知らないんだけどね」


「これは噂でしかないんだけど、国王が何かを隠し持ってるって話を聞いたことがあるな」


「何かって、武器とかモンスターとか?」


 現在のディストピアと人間界を比べると、どうしても人間界の方に軍配が上がってしまう。

 個人の強さは圧倒的だとしても、それが潰されてしまうほどの数的不利だ。


 群がるアリのような強さを、人間たちは持っていた。


「それが分からないから怖いんだ。一応アリアに報告しておいたから、何か対策は考えてくれていると思う」


「調査でも出来たらいいんだけどね。リヒトは顔が割れてるし、ボクが行っても厳しそうだ」



「あ、リヒトさんにドロシーさん。こんにちはー」


 ちょうど議論が煮詰まってきた頃。

 何やら急いでいる様子のロゼが、コウモリと共に現れる。


「あれ? 魔王様から招集がかかっていますけど、急がなくて大丈夫なんですか?」


「え!? もうそんな時間なのか!?」


「何だか大変みたいですよ。東の方にいる別の魔王に喧嘩を売られたんだとか」


「……ちょっと話し過ぎたみたいだね。急ごう、リヒト」


 リヒトたちが適当な話をしている間に、戦いの次元はさらに大きくなっていたらしい。

 詳細を聞くために、三人は急いでアリアの元へ向かうことになった。



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