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番外編 出張、ディストピア

番外編です。

エルフ視点でディストピアの内部を見ていきます。


 こんにちは!

 私の名前はリーファです。

 今日は、私の国から少し離れた、ディストピアという所に来ています。


 これも、私たちのお姫さまであるアルシェ様の許可が出たからです。

 小さい頃から、国の外へ行って旅してみたり、色んな人の役に立ってみたりしたかったので、かなりワクワクしています。


 そして、今回お世話になるディストピアという所は、どうやら地下にあるようです。

 このようなシステムは、私の国ではまず有り得ないものでした。


 だって、地下に何かを作るとなると、自然が感じにくいじゃないですか。

 一応エルフなので、太陽の光は浴びていたいです。


 でも、今回ばかりはそんなことを言ってられません。

 逆に慣れないことを体験することで、私自身も成長できると思います。


「リーファさん。ディストピアの中は広いですから、しっかり付いてきてくださいね」


「は、はい!」


 リヒトさんは、素人の私をサポートしてくれる御方です。

 なんと、新入りでありながら、このディストピアでかなり重要な役割を任されているそうです。


 私なんかのサポートをさせて良いのかという疑問もありますが、これほど心強い御方はなかなかいません。

 まだディストピアの入口ですが、ワクワクと緊張でおかしくなってしまいそうでした。


「この領域はヴァンパイアの人が守ってるので、コウモリがたまにいるかもしれませんけど、気にしないでください」


「はい! 分かりました!」


 リヒトさんに言われて周りを見てみると、確かにぶら下がっているコウモリが何匹かいました。


 ヴァンパイア――少し怖いですけど、これも経験です。

 もしかすると、悪い噂が先行しているだけで、本当は温厚な種族なのかもしれません。

 そんなことも、今回の派遣で学べたらいいなぁと思っています。


「あ、リヒトさん。あの御方は……?」


「あの人はロゼって名前です。とても仕事熱心なんですよ」


 バタバタという足音の方向を見ると、私と同じくらいの女の子が走っていました。

 重そうな荷物を抱えていて、何かを運んでいる最中だと見受けられます。


 私の心にあったのは、ただただ尊敬の気持ちでした。

 お母さんやお父さんのお手伝いはしていましたが、仕事と言われるとまだまだ家事の領域です。


 同年代の女の子が、仕事としてこんなに頑張っているのですから、私も見習わないといけませんね。


 まさか一つの領域で、ここまで刺激的なものが見られると思っていませんでした。

 普通に歩いているだけで、やる気がどんどん倍増していきます。


 あ。

 でも、ヴァンパイアさんを見ることができなかったのは、ちょっとだけ残念です。

 ロゼさんがヴァンパイア――というのは恐らく違うでしょうし、やはり忙しくてどこかに出てしまっているのでしょうか。


 いつか、お話を聞かせてもらいたいものです。



***************



「ここは、イリスとティセが守っている領域です。同じエルフですから、この領域は気に入ると思いますよ」


「は、はい! 私、この空間が好きです!」


 次に来たのは、地下であるにも関わらずかなり自然に溢れている領域でした。

 私の国にも負けないくらいの自然です。

 まさか、ここで花の匂いを感じられるとは思ってもいませんでした。


 やはり、イリスさんもティセさんもエルフということで、私と好みが合いそうです。


「お姉さま、お客さんがいる。きっと助っ人の人」


「あら、ようこそいらっしゃいました。これからよろしくお願いしますね」


「こ、こちらこそ! よろしくお願いします!」


 なんと、イリスさんやティセさんに話しかけてもらいました。

 それどころか、挨拶までしてもらっちゃって。

 普通なら会釈程度で済ませようとするものですが、かなり丁寧な御方のようです。


 まさに、言葉では表すことができないほどの感動でした。


「……名前は?」


「はい! リーファっていいます!」


「うん。真面目な子。頑張って」


「――あっ」


 イリスさんに頭を撫でられてしまいました。

 何歳か年下の女の子ですけど、私よりも数倍貫禄があります。

 これは、一生の思い出となる出来事でしょう。


 頑張ってという一言は、お金なんかとは比べ物にならないほどの効果でした。


「ハーブティーもありますから、ぜひゆっくりしていってください。この道のりは大変でしたでしょうし」


「そ、そんな! 私なんかに、そこまでしていただかなくても!」


「リーファ。お姉さまの優しさだから」


「わ、分かりました。ありがとうございます!」


 イリスさんに促されるまま、私はティセさんからカップを受け取りました。

 名前を呼ばれたことで、少々ドキッとしてしまいましたが、一々高ぶっていてはキリがありません。


 心を落ち着けるためにも、ゴクリとハーブティーを飲み込みます。


「――はぁぁ……」


「フフ、気に入って貰えたようで嬉しいです」


 それは、ついついため息をこぼしてしまうほどの美味しさでした。

 イリスさんがオススメしてくれる理由も分かります。


「ありがとうございました! このことは絶対に忘れません!」


「あ、あらあら……」


 イリスさんとティセさんに見送られながら、私はさらに奥へ進むことになりました。



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